CCW社製 LAA++ループアンテナの性能        update:2022/04/25

1.はじめに
 WRTH2022のFeatures Reviewの中で「CCW LAA++ Loop Antenna」(以下CCWループと略す)の記事がある。受信範囲は5kHz~150MHzと広範囲である。いまロシアの超長波時報局RAB-99(ハバロフスク:25kHz)の受信を企てており、当初の計画のバーアンテナでははなはだ心許なかったので、購入を考えた。日本で扱っている店はないかとネットを調べると、(有)アイキャスエンタープライズ(http://icas.to/lineup/ccw-loop++.htm)が取り扱いをしていた。しかも新発売記念特価で12,800円を8,500円で販売中とある。WRTH2022では価格がUS$90とあり、今1ドル約114円(原稿執筆当時)なので日本円にすれば10,260円、輸入にかかる費用を考えるとだいぶ安いといえる。早速注文した。

2.現物が届く
 ウェブ上の注文フォームから注文するとその日のうちに返信があり、翌日、代金9020円(送料込)を送金したら、その翌日に品物が届いた。早い対応である。品物はゆうパックで送られてきた。同封内容は、アンテナ直下に接続するアンプヘッド、電源ユニット、ループ用ケーブル、電源接続ケーブルである。電源ユニットはむき出しの基板のままだ。入っていた袋にはSDR-Kits.netのラベルが貼ってあり、ここからの輸入らしい。アイキャスエンタープライズは主にSDR受信機を取り扱っている会社のようなので、納得した。
 これはかなりの部分を手作りしなければならない。まず電源ユニットをケースに収めることからはじめ、それからアンテナの設置方法を考えることにした。

3.電源ユニットと使用電源
 電源ユニットとはいえ電波の通り道であるので、金属ケースに収めることにした。タカチのアルミケースYM80(80×30×50)を加工した。このユニットのコネクタはBNCコネクタであるので、アンテナとユニットとの接続は両BNCケーブルで、ユニットと受信機との接続はBNC-M変換プラグを使い、両M型ケーブルとした。電源は以前に作ったLM-317Tを使った可変電源があったのでそれを流用した。使用可能な電源電圧の範囲は5~15Vなので、10Vに設定した。

図1 電源ユニット

図2 電源ユニットをケースにおさめた

4.アンテナ本体とアンプヘッド部の取付

 アンプヘッド部は写真3のように四角いプラスチックケースに収められている。ケースの両端には蝶番ネジが取り付けられ、その面と垂直な面にBNCコネクタがつけられてる。ケースをあけてみたところ、内部にはアンプ基板がむき出しで入っていた。樹脂などでの防水加工はされていない。ケースには防水用のゴムがふたとの間に入っているが、雨水が入り込む心配がある。

図3 アンプヘッド部のふたをあけたところ

 さて困ったのは取り付け方だ。ケースにはどこかにネジで取り付けられるような加工部分がまったくない。アイキャスエンタープライズのHPにはカーテンレールに吊した例が、CCW(Cross Country Wireless)本社のHPにはインシュロックタイで柱に取り付けた写真と、元気そうなオジサンが自転車のアルミリムを取り付け移動用アンテナにした例が動画で掲載されていた。ちょっと参考にはしにくい。

 ベランダの内側に設置すれば雨の影響も少ないだろうと考えた。そのためには柱を立てる必要がある。ここには「突っ張り棒」を使うことにした。2.5mまで伸びるものを購入した。ただ指向性があるので、ループ面を動かすことができるようにする必要がある。「突っ張り棒」に通す輪も売っていたのでこれも購入した。輪は垂直方向には固定し、柱に対しては回転するようにした。水道管パイプにちょうどよい内径のものがあったので、これを柱に通し、ビニールテープで固定した。ループ部分は付属のワイヤーを使ってみることにした。線がより線で柔らかいためそのままではループにならず、垂れ下がってしまう。仕方がないので横棒を取り付け、菱形にした。横棒は目立たぬよう黒ペンキで塗装した。東側のベランダに設置した状態のものが写真である。実にカッコ悪い。洗濯物を干す場所と競合している。まあ、しばらくはこれでいき、暖かくなったらまた考えることにしよう。

5.使用した感想

 確かにノイズは少ない。使用中のDATONG社製のAD370(アクティブダイポール)と比べると、全然違う。例えば、日中の時間帯にCCWループならば中波の和歌山放送がRS=25くらいで聞こえるが、AD370では雑音のためにまったく聞こえない。したがって、このアンテナに替えてから、夕方の中波受信はだいぶ進展した。

図4 ベランダに設置したCCWループ

 さて、購入を決めた第一の理由である長波帯の受信だが、JJY60kHzは聞こえるものの、JJY40kHzはかすかに聞こえるほどである。元々KENWOODのR-5000はダイヤルが30kHzからはじまるのだが、カタログでは100kHzからとなっている。どうやら100kHz以下はオマケらしい。そのためいまのところ長波帯の性能についてはなんともいいがたい。現在、超長波用コンバータを製作中なので、これを使った際の性能評価をまた報告したい。
 短波帯の感度についてはAD370とほぼ同等であると感じた。ただし、ローバンドについては、CCWループの方が、雑音が少ない。またVHF帯についてはAD370の方が感度がよい。

 アンテナの指向性については、以下のような実験を昼間に行ったので、その結果を紹介する。中波帯については、近隣の放送局を使用して指向性を調べた。手動で動かすため、細かい角度は設定できないので、およそ30°ごとに受信機のSメーターの振れをみて受信強度の測定値とした。結果を図5~図7に示す。赤い矢印は電波の到来方向である。結果からは、ヌルの方向が信号強度が弱い局の場合はよく出ているが、強い局だとそれほどの差は出ない。特定の局をヌルの方向にして混信を減らすというのは難しそうだ。短波帯については10MHzと15MHzのBPMを対象とした結果を図8と図9に示す。これを見ると地理的な方角とアンテナの指向性とにずれが見られる。BPMは陝西省の蒲城(35.00N、109.30E)からの送信なので、ほぼ真西にあたるはずなのだが、指向性は南西となっている。理由はよくわからない。ベランダへの設置なので、建物の影響をかなり受けていることは考えられる。ついでにVHF帯の指向性も調べてみたが、図10~12のようになった。一部指向性の乱れもみられた。

6.おわりに
 手を加えなければならない部分がかなりあるアンテナなので、そういうことをいとわない人には、値段も手頃だしむいていると思う。今後は、ループ部分をシールドループにしてみたり、ループを複数回巻いてみたりするなど、いろいろ試みたい。


《各バンドでの指向性》

●中波帯
図5 図6

図7

●短波帯
図8 図9

●超短波帯
図10 図11

図12
 
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