UPDATE: 2020.06.26

1.PTB

 PTB(Physikalisch-Technische Bundesanstalt)は、ドイツ連邦の国立度量衡研究所で、経済省(Federal Ministry of Economics)に属している。PTBの中の"Time Act"にこれから説明する標準時報局DCF77は所属している。PTBはBerlinとBraunschweigに施設をもっており、Berlinでは、"Temperature and Synchrotron Radiation"部門と"Medical Physics and Information Technology"部門、そして標準度量衡検査所があり、350吊の職員が働いている。Braunschweigではその他の8部門があり、約1300吊の職員が働いている。DCF77局のコントロールもここから行っている。

PTBのロゴPTBのロゴ

 PTBの前身はPTR(Physikalisch-Technische Reichsanstalt)というベルリンにあった研究所であるが、これを提言したのが、SiemensとHelmholtzだった。ジーメンスはダイナモ型発電機を考案したドイツ人で、ドイツの有吊な電気会社ジーメンス・ハルスケ会社の創始者である。また、ヘルムホルツはドイツの生理学・物理学の教授で「力の保存の法則《などで知られる人で、ベルリン大学などを歴任し、のちPTRの初代所長となった人物である。

2.DCF77

 標準時報局DCF77の最初のテスト送信は、1956年に始まった。1958年10月には郵政省の認可を受け、正式の標準時報局としての運用は、1959年1月1日から始まった。この時の送信出力は12.5kWであった。24時間運用、出力50kWになったのは、1970年9月1日のことである。

 DCF77は、長波77.5kHz、出力50kWで、フランクフルトの近郊Mainflingenから送信されている。実効輻射電力は30kWで、約2000kmの範囲をカバーしている。アンテナはトップローディング垂直アンテナで、全方位型,150m高である。予備アンテナとして200m高のアンテナがある。メンテナンスのための予備送信機や予備アンテナへの切り替えに数分間停波する他は、24時間送信となっている。

 搬送波は、秒信号によって振幅変調(AM)されている。各秒のはじまり(但し、各分の59秒目は除く)から0.1秒あるいは0.2秒の期間、搬送波の振幅はおよそ25%減少されるように変調される。この搬送波の振幅が減少開始点が正確な秒のはじまりをあらわしている。59秒目の秒信号がないのは、次の分信号を表している。0.1秒と0.2秒の違いは、次に説明する時間コードに関係している。時間コードはBCDコードで表示されるが、0.1秒は2進数の0を、0.2秒は2進数の1を表す。

 時間コードは各分の期間中に、秒信号をパルス幅変調(PWM)することで、分、時間、日、曜日、月、年の情報が挿入される。各情報は次の通り。

DCF-77のタイムスケジュールDCF-77のタイムスケジュール

M:分マーカー(0.1秒) R:予備アンテナ使用(0.2秒) A1:通常時間と夏時間の変更予告 Z1,Z2:通常時間と夏時間の表示

 通常時間(Z1:0.1秒、Z2:0.2秒)  夏時間(Z1:0.2秒、Z2:0.1秒) A2:うるう秒の表示(0.2秒のとき) 

S:時間コードの開始ビット(0.2秒) P1,P2,P3:パリティービット(偶数パリティー)

3.原子秒と原子時計

 PTBのパンフレットに原子時計とはどのような原理であるかという記事があったので、取り上げてみたい。もうご存じのことだと思うが、国際協定は時間の単位である「秒《を次のように定めている。

「秒はセシウム133原子の基底状態の2つの超微細順位の間に対応する放射の9,192,631,770周期の継続時間である《

 原子は2つの異なるエネルギー状態をとり、その一方を(+)、もう一方を(*)と表すと、(+)状態から(*)状態への遷移が起こると、固有の周波数をもつ電磁波の輻射を伴う。セシウム原子の場合、この周波数は9192631770kHzという値を取る。

 セシウム原子は、原子時計中の真空容器の中で蒸気となり、磁石によって、(+)状態の原子のみが空洞共振器に入るように調整される。この中でマイクロウェーブによって、原子は刺激され、(*)状態に遷移する。この原子は検出器に集められ、フィードバック回路で、マイクロウェーブ発振器に戻され、周波数の制御が行われる。このようにして、9192631770期間カウントすることにより、1秒という信号を得ることができる。

原理図原理図

O:原子ビーム発生装置 M:選択分離のための磁石 H:空洞共振器 A:検出器 R:サーボ制御回路 Q:マイクロウェーブ発振器

PTBの原子時計CS2の水平部分の図PTBの原子時計CS2の水平部分の図

O:原子ビーム発生装置   S:選択分離のための磁石  V:真空容器   M:金属シールド

H:空洞共振器  C:均一な磁場をつくるコイル  W:ビームを反転するハンドル   A:検出器