■フラフープループアンテナ(Hula Hoop Loop Antenna; HHLA)の製作■ Is
モービルでフラフープループ使用中
今年4月からモービルワッチをはじめました。手軽に設置できる点からAN-1を使用してきました。そこそこゲインがあってそれなりに電波を拾ってくれて・・現在モービルワッチのメインアンテナになっています(他に選択肢がないのですが・・)。
しかし都市部でのモービルワッチはやはりノイズレベルが高く、微弱な信号を了解するには困難な場合がほとんどです。そこで自宅で使用しているループアンテナをモービルで使えないものかと思い立ちました。
が、このループ、一辺が1.3mで対角線長については2mもあり、マストに金属を使用していますので重量も結構なものです。おいそれとはモービルワッチに持ち出す訳にはいきません。そこで今回は「機動性に富んだ物」をモットーにループアンテナを作りました。
1.改良点
ループの形状ですが、同一エレメント長で面積が最大となる円形としました。フラフープを利用してその中に同軸を通してアンテナエレメントとして、マストにはPVCの水道管とそのジョイントを使用し、配線すべてを構造内に納めて金属の使用をさけました。
給電方式ですが、前作はピックアップループ方式でしたが、今回はより低ノイズとされている直列共振型にしました。プリアンプについては電源の問題をクリアできずにコントロールボックス内に収納してあります。
2.ループの直径と同調範囲
今回は円形の空芯ループですので、インダクタンスを比較的簡単に計算できます。この計算結果とバリキャップの容量で同調範囲を計算する事が可能です。計算はネット上で計算式を掲載しておられる方がありましたので、そのホームページを利用しました。
http://home7.highway.ne.jp/jr6bij/index2.htm
ループの直径(mm)とループの前後長(5C-FVの外皮は直径約5mmですが、実際には同軸が同一平面上から多少ずれるため、8〜10mm程度の値を入力すると実測値に近いものになります、今回は9mmを入力)さらにループの巻き数(1)を入力するとインダクタンスがnHで表示されます。
バリキャップ1SV149ですが2個接続した場合0〜12Vの制御電圧で400〜10pFの値をとるとされています。実際の同調範囲とバリキャップの容量から計算される配線浮遊容量3〜5(平均3.8)pF程度が存在しますので、理論値の計算にはこの容量も加味してあります。
ループを作製し同調範囲を実測したものもいくつかありますので、実測したものについてはカッコ内に掲載しておきました。
表1 ループの直径と同調範囲(MHz)
直径(cm) | 容量(nH) | 1SV149×2 | 1SV149×4 | 1SV149×6 |
75 | 2510 | 5.0-27 | 3.5-21 | 2.9-17 |
85 | 2910 | 4.6-25(4.5-25) | 3.3-19(3.3-20) | 2.7-16 |
105 | 3740 | 4.1-22(4.0-22) | 2.9-17(2.9-17) | 2.4-14(2.3-15) |
120 | 4380 | 3.8-21 | 2.7-16 | 2.2-13 |
148 | 5620 | 3.3-18 | 2.4-14(2.4-14) | 1.9-12 |
168 | 6530 | 3.1-17 | 2.2-13 | 1.8-11 |
カッコ内は実測値
ここに掲載した直径ですが、「何でこんな中途半端な数字なの?」と、みなさん奇妙に思われるかもしれません。75,85,148,168はフラフープの直径から来ています。105は100cm長の水道パイプを使用したときの直径ですし、120は1辺1mの正方形ループとほぼ同等の面積になるサイズです。
利得はループの面積に比例しますので大きい方がいいのですが、構造上の強度の問題からあまり大きなものは作製困難です。フラフープを使用して作製するループでは105cm以下では強度に不安を感じませんが、148cmだと強度不足が否めません。83cmフープを2つ使用して作る直径168cmが限界かな?と感じます。
また表1をご覧いただくとおわかりかと思いますが、1本のループで短波帯すべてをカバーするのは不可能です。が、うまく選べば90mb〜16mbをカバーでき(両端は多少苦しいですが)、ワイドバンドアンテナとして1本でも十分実用になります。計算値と実測値は比較的よく一致しますが(再現性がいい)、実際に作製される際には同調下限は余裕をもってデザインしてください(高い周波数側は多少同調がずれても使えますが下限はクリティカルです)。
いろいろ試作しましたが直径105cmの物が感度、大きさ、強度のバランスがいいように思います。バリキャップ4個使用で90mb〜16mbがカバーできますので、これを今回は作ってみることにします。
3.部位集め
1) フラフープ
トイザラスで購入しました。直径73cmと83cmのものが499円でMauiHoopという商品名で発売されています(青、オレンジ、緑、紫、ピンク、黄)。意外と紫が目立たなくていいです。直径73cmのものを2本購入します。オンラインショップも開設されていますが、そこで購入可能かどうかは検証していません。トイザラスのものはちょうど水道管のジョイントにはまりますが、他社のものは確認をとっていません。
2) 水道管
外径18mmのPVCパイプで全長1mのものを購入します。ジョイントは内径18mmのT字型のものを2つ購入します。水道用のものは規格が決まっているようで、どこのホームセンターでも販売されています。
3) バリキャップ
AM用のバリキャップ1SV149を使用します。通販のサトー電気で1個60円、10個550円(税送料別)。大阪日本橋でも共立電子やデジットで1個65〜80円の価格で販売しています。0〜12Vの制御電圧で2個直列の使用時には400pF〜10pFの容量で公称のQは200です。作製の際の破損や保守用に多少多めに購入しておくのがよいでしょう。よりQの高いものを求めるなら1SV102(Q=400)がありますが制御電圧が0〜30Vですのでプリアンプを併用する場合、電源の確保が面倒になります。
4) トロイダルコアー
マッチングトランスにはFT50-43を3個、アンプに1個必要で合計4個購入します。サトー電気で1個170円、共立電子では240円で販売していました。熱や衝撃により容易に劣化しますので注意が必要です。話しは脱線しますが、以前ICF-2001Dのフィルタ交換で書いたムラタのセラミックフィルタCFW455HTが共立電子で販売されています。1個400円で結構在庫あるようです(ネットオークションでは2200円で落札されていました)。興味のある方一度お試しを。
5) 可変抵抗、ケース
バリキャップの制御電圧を可変するものです。わずかな電流しか流れませんので何でもいいようですがケースとのかね合いもあって私は10kΩBカーブで16mmのものを使用しました。大きなケースに入れるなら24mmでもいいでしょう。通測用でなくても問題ありません。この可変抵抗を納めるケースですが見た目にこだわるならテイシン電機のアルミケースTC-110がおすすめです。先ほどの16mmの可変抵抗がちょうどはまります。いずれも京都のニノミヤ無線で購入しました。どうでもいいなら100円ショップのブリキ缶で十分です。
もう1つケースが必要です。マッチングトランスを収納するケースです。今回は100円ショップで販売されているものを使用しました。
6) エレメント
同調ループには75Ωの5C-FVの外皮(シールド部分)を使用します。4m購入すれば十分です。バリキャップへの制御電圧は3C-FVを介して供給します。ループ部分には1.5mもあれば十分です。ループからコントローラーまでは3C-FVを使用しましたが、50Ωにこだわられるとか損失が気になる方は3D、5D系のケーブルがいいのではないでしょうか。
7) 電源
秋月電子通商で販売されている12V500mAを使用します。1個300円です(原稿執筆時150円になっていました)。12V200mA(ALA1530の電源と全くおなじもの)でも十分です。何かと使い勝手いいのでいくつかまとめ買いしてあります。
8) その他
抵抗100kΩ1個10kΩ2個、コンデンサー0.1uF4個、スイッチ1回路用2個、発光ダイオード、Mコネ台座3個、電源差込口、つまみ以上がループアンテナ関連のパーツです。同時に組み込むプリアンプのパーツについては6月号の会報を参照ください。表2に今回使用したパーツとその購入先の一覧を提示しておきます。アンプのパーツも同時に掲載してあります。参考までに購入時の価格(送料、手数料、消費税含まず)も掲載しています。価格については販売店により、また時期によりかなりばらつきがありますので、あくまでも参考程度にしてください。パーツ代、消費税、送料、手数料あわせて約1万円くらいでしょうか。
表2 ループアンテナ部品一覧表
部品 | 規格 | 個数 | 入手先 | 価格 |
フラフープ | 直径83または73cm | 2 | トイザラス | 499円×2 |
水道管PVC | 外形18mm全長1m | 1 | DIY店 | 110円 |
水道管ジョイント | 内径18mmT字型 | 2 | DIY店 | 40円×2 |
バリキャップ | 1SV149 | 4 | サトー電気 | 60円×4 |
FET | 2SK125-5 | 2 | サトー電気 | 80円×2 |
同軸ケーブル | 5C-FV | 5m | DIY店 | 470円 |
3C-FV | 10m | DIY店 | 580円 | |
1.5D-QEV | 若干 | ニノミヤ | 160円くらい | |
リボンフィーダー | 300Ω | 若干 | DIY店 | 160円くらい |
トロイダルコアー | FT50-43 | 4 | サトー電気 | 170円×4 |
UEW | 0.26mm | 1袋 | ニノミヤ | 160円くらい |
コンデンサー | 積層セラミック0.1uF | 4 | サトー電気 | 40円×4 |
積層セラミック0.47uF | 3 | サトー電気 | 50円×3 | |
電解25V10uF | 1 | サトー電気 | 30円 | |
抵抗 | 100kΩ1/4W | 2 | ニノミヤ | 10円×2 |
10kΩ1/4W | 1 | ニノミヤ | 10円 | |
1kΩ1/4W | 1 | ニノミヤ | 10円 | |
可変抵抗 | 10kΩB 16mm | 1 | ニノミヤ | 90円 |
200ΩB(アンプR1用) | 1 | ニノミヤ | 90円 | |
インダクター | 100uH | 1 | サトー電気 | 100円 |
ケース | テイシンTC-110 | 1 | ニノミヤ | 430円 |
タッパ | 1 | 100円ショップ | 100円 | |
コネクター | Mコネ台座 | 3 | ニノミヤ | 180円×3 |
Mコネ | 2 | ニノミヤ | 180円×2 | |
電源 | 12V200-500mA | 1 | 秋月電子 | 300円 |
スイッチ | 一回路on-off | 2 | ニノミヤ | 180円×2 |
発光ダイオード | 規格不明 | 1 | DIY店 | 200円くらい |
ユニバーサル基盤 | 40mm×40mm | 1 | ニノミヤ | 160円 |
カラーベーク | 6mm | 4 | サトー電気 | 5円×4 |
配線用コード | 適当 | 1 | ニノミヤ | 150円くらい |
ネジナット | 3mm×12mm | 1袋 | DIY店 | 100円くらい |
電源差込口 | 2.1mm芯タイプ | 1 | ニノミヤ | 160円くらい |
つまみ | 適当 | 1 | ニノミヤ | 120円くらい |
ゴム足 | 適当 | 4 | DIY店 | 100円くらい |
トイザラス:向日町店、サトー電気:通販、ニノミヤ:ニノミヤ無線京都店他、DIY店:ニック洛西店他、秋月電子:秋月電子通商(通販)
4.作製
いよいよ作製です。ノウハウをできるだけ詳しく解説しました。いろいろ試してみたのですが、今回紹介させていただく作成法がもっともシンプルで簡単なものだと思います。ループおよびマッチングボックスの回路図(図1)とコントローラーの回路図(図2)を掲載します。
図1 ループおよびマッチングボックスの回路図
図2 コントローラーの回路図
1) ループ部の作製
ループ部の実体配線図を図3に示します。その他写真をまじえ解説していきます。
図3 ループ同調部の実体配線図
(1)フラフープの解体、加工
フラフープの円周上の一部にバーコードや商品のタグが張ってあり、そこでステイプラー4本で固定してありますが、これをラジオペンチその他で取り外します。パイプ内部の短いパイプを引き抜きます。さらに内部のカス(フープを回転させると音が出るようにいれてある)を捨てます。2本フープを分解します。73cmのフープを分解した場合全長が230cmになりこのうち165cmのところで切断(逆から65cmでもいい)して使用します。
(2) T型ジョイントの加工とフィーダー
ジョイントの1つにドリルで4〜5個穴をあけ、リーマーを使って広げてつなげます。幅は5C-FVが通る程度で長さは約4cm。同軸3本がここを通ります。もう一のT型ジョイントはそのまま使用します。さらに300Ωのフィーダー約10cmを用意します(図4)。
図4 穴を広げたジョイントとフィーダー
(3) エレメントと同調部の接続
アンテナエレメントとして5C-FV2m×2本を使用します。図5のようにフープとジョイントをつなげた状態で同軸のシールド部分と先を約3cm裂いた300Ωフィーダーとを半田付けします。もう一本の同軸もフープに通した状態で半田付けします。半田付けした部分をテープで絶縁して、フィーダーの半田付けしていない端をT字ジョイントの下に引き出します。
図5 エレメントとフィーダーの接続
図6のように引き出したフィーダーの先にバリキャップを半田付けし、制御電圧用の同軸(3C-FV約1.5m)をここに配線します(抵抗、コンデンサーが入る)。同調部もテープで厳重に絶縁して水道管の中に納めます。水道管にぎりぎり入るくらいにテープを巻きます。同調部の可動性を極力減らすためです。
この300Ωフィーダーの使用は、構造上の安定化を重視したもので、不整合点を作製したくない方は5C-FVとバリキャップを直接接続された方がいいでしょう。また今回はアンテナエレメントに同軸のシールド部分を使用していますが、芯線を使用したシールドループも作製可能です。興味のある方はチャレンジしてみてください。ただし、インダクタンスの変化にともなう同調範囲のずれやゲイン低下の可能性がありますのでご注意ください。
図6 同調部の接続
(4) ループ状に仕上げる
さきほど穴開け加工したT型ジョイントをループの下に持ってきて、穴にエレメントの2本の5C-FVと制御用の3C-FV1本を通して、アンテナをループ状に仕上げます。外見上は立派なループアンテナになりました。ループから出た3本の同軸ですが、15〜20cmループから垂らした状態にします。また3C-FVを若干長めに残します(引っ張れたときに3C-FV部分が一番弱いため張力がかからないように)。図7ではマッチングボックスを付け替え可能なように、F型コネクターをつけてあります。
2)マッチングボックスの作製
(1)トランスの作製
図1の回路図を参照ください。今回は作製しやすいように多少太めの0.26mmのUEWを使用しました。トリファラーで約60cm、バイファラーで約40cmのUEWを使用します。これを手回しドリルでよってトロイダルコアーに巻いていきます。巻き終わった後、各線のコーティングを剥ぎ、テスターで足の位置関係を調べ、しるしを付けます。ユニバーサル基盤を1cm×4cm程度に切ってその上にトランスを並べて配線します。最後にテープで固定します。文章で書くと簡単ですが、とっても神経を使います。よそ見しているとすぐわからなくなります。
図7 ループの仕上げ
(2) マッチングボックス
先ほど作製したトランスをボックスに納めます。100円ショップのタッパに組み込みました。ループから出てきた3本の同軸ですが、ループは1つ作れば十分といわれる方は直接トランスと接続すればいいでしょう。私はいくつもループを作って実験したため、Fコネで脱着できるようにしました。トランスをたくさん作らなくていいのですが、難点は水に弱いことと多少重くなること。同軸のシールド部分をアンテナエレメントとして使用していますので屋外に設置して使用する場合、雨が降るとFコネ台座同が簡単にショートしてしまいます。十分な防水対策が必要です。
このFコネ台座ですが、あちこち探しましたが見つからず、最終的にはネット上で佐賀県の会社(部品屋ドットコム)から購入しました。シールドループとするならマッチングボックスを金属製にしてFコネを使用すると好都合です。マッチングボックスからコントローラーへはMコネで接続します。図8にマッチングボックスを掲載しておきました。写真上がトランスをテープで防水し、Fコネで脱着できるタイプで、下が直接接続タイプです。トランスの様子が分かるようにテープをはずしてあります。
図8 マッチングボックス
3)コントロールボックスの作製
バリキャップの制御電圧を調節する可変抵抗器を納めるボックスですが、ループ単体ではゲイン不足なため2SK125パラのゲート接地型アンプで増幅しています。アンプのみとしても使用可能ですし、アンプなしでコントローラーのみとしても使用できます。当初スルー回路を入れましたがうまく作動せず、アンプ直結の状態です。写真(図9)と回路図(図2)を提示させていただきます。
図9 コントロールボックス
以上でできあがりです(図10)。ループは6本、マッチングボックス4個、コントローラーは3個作りました。平均するとループ作製に約2時間、マッチングボックス作製に約2時間、コントローラー作製に約4時間はかかりました。作製に要する時間の目安にしてください。
図10 ループいっぱい
5.使用感
よく聞こえます。モービルでへたなロケーションでAN-1を使用して聞くより、自宅でループを使用して聞く方がよかったりします(図11)。掲示板に掲載されている局もかなり拾えるようになってきました(自宅で)。このためモービル用にループを作製したのですが、モービル出撃回数は激減し、ヤブ蚊に刺される頻度も激減しました。
前作のループよりもよく聞こえます。直列共振方式とピックアップ方式の違いもありますが、フラフープループは簡単に振り回すことがでるのが幸いしてか、ベランダのあちこちにぶら下げて受信状態のよりよい場所を探すことができるようになり、これがよく聞こえる理由の一つにもなっています。詳しいレポートは次の機会に紹介させていただきます。
図11 自宅でループアンテナ使用中
最後に今回紹介させていただいたループアンテナですが、フルネームで書くと結構長いので、略して次のように命名してみました。
日本語では単にフラフープループ
英語ではTOYSRUS HHLA-105
トイザラスのフラフープを使って作ったループアンテナ(Hula Hoop Loop
Antenna)で、最後の数字は直径を表します(直径105cmという意味です)。一見メーカー製のアンテナのようなネーミングです(わざとそうしました:笑)。今後ロギングではこの呼び方を使用させていただきますのでよろしくお願いします。
また今回の記事はあくまでも構造物としてのループアンテナの作製に重点を置いて解説させていただきました。電気的にはまだまだ改善の余地があると思います。お気づきの点、おもしろいアイデアなどがございましたらご教示いただければ幸いです。