UPDATE: 2020.07.08

1.概要

 MSFの送信地はAnthorn(北緯54°55'、西経3°15')で、24時間運用されている。

(以前はRugby(北緯52゜22’、西経1゜11’)であったが2007年に移転した)

送信周波数は、長波の60kHzで、周波数精度は2×10-12以内、出力は15kWとなっている。電波はイギリス全土だけでなく、北ヨーロッパや西ヨーロッパの国々でも受信できる。電界強度は、送信所から100kmの地点で10mV/m以上、1000kmの地点で100μV/m以上とされている。

 MSFの吊称は、日本のJJYと同じく放送上のコールサインである。Mはイギリスのプリフィックスで、SFは局のIDだが、ウェブの中では推論と断わりつつ「Standard Frequency《という説を紹介している。

 MSFの資金は通商産業省が出しており、技術的な管轄を国立物理研究所(NPL)が行ない、実際の送信はNPLと契約を結んでいるBabcock Internationaru社のAnthorn Radio局が行っている。

 アンテナは、モノポールアンテナで、ビームパターンはほぼ無指向性である。

 MSFの信号は、NPLが提供する原子時計とタイムコード機によって作られ、送信される。送信信号は、モニターされ、TeddingtonのNPLにある標準時間と比較、調整されている。

2.歴史的経過

 国立物理研究所(National Physical Laboratory:NPL)の創立は1900年のことで、TeddingtonのBushy Houseの地である。(Bushy Houseとはロンドンの中心部から西北西に約18kmの場所である。)

 NPLは計測分野において世界をリードし、国家一次標準の維持などに力を注いできた。1955年にはLouis Essenによりセシウム原子時計が開発され、2011年にはCsF2で知られる世界で最も精度のよいセシウム原子時計が開発された(その誤差は13.8億年に1秒)。

 MSFが1950年に設立されたときには、60kHzだけでなく、2.5MHz、5MHz、10MHzの短波帯を使って、30分の運用を1日数回行っていた。この頃は、まだ分信号と秒信号だけであった。1953年5月には24時間運用となったが、他局の信号を受信するために5分間の停波時間があった。60kHzが24時間運用となるのは1966年のことである。

 その後、1974年9月に、毎分の最初の秒信号の間に分と秒の情報が100bit/Sのデータとして付け加えられた。1976年11月には、それに月日データが追加された。現在のようなデータ形式になったのは、1998年10月のことである。

 短波帯の3波が廃止されたのは、1988年2月のことであった。理由は、JJYと同様に、短波帯での利用がほとんどないためである。

3.日時コードフォーマット

 日時コードは、下図のように、毎分00秒には分識別パルスが、01~59秒には、それぞれ2つのパルスxxAとxxBが入れられている。xxは各秒に相当する。パルスの極性は、0がON、1がOFFである。

 01A~16A、17B~59Bは未使用である。01B~16BはDUTコードで、UTCとGMTとの差を100mS単位で±800mSまで表す。17A~24Aは年(西暦を下2桁で)を、25A~29Aは月を、30A~35Aは日を、36A~38Aは曜日(0が日曜日、6が土曜日)を、39A~44Aは時を、45A~51Aは分をBCDコードで表す。54B~57Bはパリティービットである。

コードのフォーマットコードのフォーマット

DUTコード
DUT1+の値 DUT1-の値
0mS'1'をセットしない -0mS'1'をセットしない
+100mS01Bを'1'にセット -100mS09Bを'1'にセット
+200mS01B,02Bを'1'にセット -200mS09B,10Bを'1'にセット
+300mS01B~03Bを'1'にセット -300mS09B~11Bを'1'にセット
+400mS01B~04Bを'1'にセット -400mS09B~12Bを'1'にセット
+500mS01B~05Bを'1'にセット -500mS09B~13Bを'1'にセット
+600mS01B~06Bを'1'にセット -600mS09B~14Bを'1'にセット
+700mS01B~07Bを'1'にセット -700mS09B~15Bを'1'にセット
+800mS01B~08Bを'1'にセット -800mS09B~16Bを'1'にセット

 

日付と時間のコード
年 BCD(2進化10進数)(00~99)
804020108421
17A18A19A20A21A22A23A24A
月 BCD(01~12)日 BCD(01~31)曜日 (0:日、6:土)
10842120108421421
25A26A27A28A29A30A31A32A33A34A35A36A37A38A
時 BCD(00~23)分 BCD(00~59)
201084214020108421
39A40A41A42A43A44A45A46A47A48A49A50A51A

例えば、2020年7月15日(水)9時23分 ならば       年は00100000 月は00111 日は010101 曜日は011 時は001001 分は0100011 となる。

 

【逸話的短文】

 実はRugbyには、MSFの前にGBRという電信局があった。GBRは16kHzで、郵政省が管轄し1926年から全世界的なサービスを開始した。翌1927年12月19日に、GBRは王立天文台からの時間信号を送信するサービスを始めた。10時と18時GMTの2回、5分間の秒信号を送信した。GBRは1986年11月末をもって閉局となった。

 

【参考】

http://www.npl.co.uk/msf-signal