京滋地区における近年の北米中波局の受信実績 Ts


 2009年春の琵琶湖ペディションを迎えるこの機会に、1994年以降に京滋地区で受信された北米中波局の一覧を別表のとおり作成しました。これらの局は、近江舞子でのペディション及びメンバー自宅で受信されたものです。このような一覧表が作成されたのは初めてと思いますが、結構な局数となりました。

 受信時以降に局名が変更されているものについては、原則として現在の局名を表記しています。また、既に消滅している局は表記していません。

 1994年より前にも受信実績は報告されているのですが、単発的であまり盛んではなかったようです。

 中波用アンテナは、かつては室内用ループ・アンテナを自作するか、既製品(ナショナルRD-9170)を購入するのが一般的でした。筆者も短波誌1977年12月号の記事を参考に1m×1mの室内用ループを製作し、受信機RF-2200に接続して北米中波局の受信を試みましたが、近接雑音の影響もあり、なかなか成果が上がらず、北米中波局は中部地方以東でないと受信困難と半ば諦めていました。

 その後、1991年10月以降ペディションでビバレージ・アンテナを設置し、2005年4月に筆者宅にアクティブ・ループ・アンテナALA1530を設置するなど、SN比のよいアンテナへの転換が図られるとともに、受信機の性能も向上しました。また、北米における中波放送バンドが1700kHzまで拡張され、拡張された周波数帯では混信が少ないこともあり、京滋地区においても相当数の北米中波局が受信できることが分かってきました。

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最初はカリフォルニア州等西海岸から始まり、現在のところ、東はテキサス州、今月になってオクラホマ州まで受信されています。図中、州の略号を線で囲んだものは受信実績があります。日本への最短伝搬経路が北極圏に近接する地域ほど受信が難しくなっています。北米・日本間の中波の伝搬は、北極圏で冬季に発生するオーロラの影響を強く受けると言われています。

米国局は出力が最大で50kWしかありませんが、夜間出力880Wのテキサス州の南端BrownsvilleにあるKVNS(1700kHz)も十分に受信できています。

 受信時期としては、9月〜翌年3月が中心となっています。

別紙の一覧表を見ると、米本土局は、日本の日入前後の概ね20時までの早い時間帯には比較的低い周波数の局が入感する傾向があります。一方、概ね20時以降の遅い時間帯には比較的高い周波数の局が入感する傾向があります。

北米西海岸からの中波伝搬については、短波誌1981年9月号で堀場啓二氏が研究レポートを発表されており、前記の入感傾向を理解する上で大変参考になります。堀場氏は、その中で18時30分前後をピークとする第1到来波はF層−F層−E層による多重伝搬、22時前後をピークとする第2到来波はF層−F層−F層のF層伝搬であると述べられています。

夕方は日本国内局・近隣諸国局の混信がまだ少なく、北米局の信号が弱くても意外とIDが取りやすくなります。その後、一旦混信に埋もれても、夜間に混信局の信号が電離層を突き抜けて北米局が浮いてくることがあります。

現地の日出前後の約30分間は信号が特に強くなります。東にある局ほど早い時間に信号のピークがやって来ますので、同じ周波数でワッチを続けていると入感局が時間と共に入れ替わっていきます。しかし、北米局が同一周波数で3局同時に入感するときもあり、嬉しい反面、頭の中で分離してIDを取るのに苦労します。

さらに、米国局は、昼間出力が夜間出力より10倍程度大きい場合が多く、現地の朝の出力の切替後に再び受信できることがあります。

 アラスカ局は、日本に近いにもかかわらず、KICY及びKNOMを除き受信は難しいです。八戸市在住の川口大助氏も短波誌1977年9月号で、アラスカの内陸局は受信がきわめて困難である旨を述べられています。

 太陽黒点は昨年増加に転じたと報じられましたが、なかなか増加せず、太陽活動が低調な状態が続いています。そのためか、北米中波局の受信が好調ですが、気候変動の原因となるとも言われており、単純に喜んでばかりもいられません。

当面の目標は、ルイジアナ州等ミシシッピ川以東のWコールの局を受信することです。東日本ではチリやキューバの中波局が受信されており、今後も粘り強くワッチし受信実績を重ねていきたいと思います。2008年11月にIsさんが中波帯全体の高周波信号波形を記録可能な”Perseus”を導入されたことにより、今後、科学的な伝搬調査にも繋がるさらなる成果が期待されます。

 京滋地区における北米中波局の受信実績一覧(PDF:60kB)numw.pdf へのリンク

参考Webサイト:

FCC - AM Radio Database Query  (http://www.fcc.gov/mb/audio/amq.html)

University of Alaska - Aurora Forecast (http://www.gedds.alaska.edu/AuroraForecast/)

※地図は、Wikipediaから引用し、加筆。

2009年3月15日作成/2009年11月22日更新)


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