ループアンテナ対応BCL用プリセレクターアンプの製作 Td


製作の動機
 いろいろなアンテナを試してみた結果、現在BCLにはハム用の4バンドV型ダイポールアンテナを使用しています。その理由は、最もノイズが少なく弱い電波の明瞭度がすぐれているためです。しかし、不満点もあります。ハムバンド付近、つまり7MHz、14MHz、21MHz、28MHz近辺の周波数は大変感度が良いのですが、5MHz以下、9MHz帯、17MHz帯はかなり感度が落ちるのです。試しにアンテナチューナーをVダイポールとの間に入れてみましたが思った程の効果がありませんでした。そこでプリセレクターアンプ(以下プリアンプという)の購入を考えたのですが、国内では市販品が見あたりません。そこで思い切ってプリアンプの製作にチャレンジすることにしました。

製作コンセプト
 せっかく自作するのですから、海外製の市販品とはひと味違ったオリジナル性のあるものを作ろうと思い、次のようなコンセプトのプリアンプを製作することにしました。
1.中波のループアンテナやフェライトバーアンテナが接続できること。
2.短波帯は2.3MHzから22MHzの放送バンドをカバーしていること。
3.内部ノイズが少ないこと。
4.アンテナ・スルー回路があること。
5.長時間使用できるようにAC電源対応であること。
6.入手が容易な部品だけを使用し、且つ失敗無く製作できること。

 構想が固まったところで、先日T氏から頂いたループアンテナ用プリアンプの製作記事を参考に回路図をひきました。

preamp.jpg (16780 バイト)



部品集めから完成まで
 部品については、バーアンテナ、ポリバリコンや抵抗、コンデンサの一部は古い6石ラジオから部品取りすることにし、あとは通信販売で調達することにしました。心臓部のRF増幅部は市販キットを改造して使用することにしました。キットの回路構成は全く不明でしたが、だいたいの予測はできましたし、どうせ改造して使用するのでそんなに問題にはならないだろうと考えました。使用キットは、CQ誌に掲載されているサトー電気の「オリジナルプリアンプキット28MHz用」(@780、他に50MHz用、144MHz等がある)です。その他のパーツ類と一緒に一括して発注しました。約一週間で注文品が到着しました。買いに行く電車賃や時間を考えると通信販売の方がはるかに効率的で安あがりであると実感しました。キットの方は予想していた通りの回路構成でほんの少し改造するだけで使用できること分かり一安心しました。

 部品は一通り揃いましたが、何十年振りの本格的な自作なので不安でいっぱいでしたが、心配するより生むが易しで、ケースの加工、部品の取り付け、半田付けと順調に進みました。同調コイルの取り付けだけを残して、念のため配線の間違いが無いかチェックした後、緊張の火入れです。恐る恐る電源を入れるとサーっと受信機のノイズがほんの少しですが大きくなりました。なんと一発で動作していることが確認できました。Vd(5V)、Id(12.5mA)でId(ベストは10mA)が少し多いですが共にほとんど設計値以内であることを確認しました。

 次に最後の難関である同調周波数の調整です。同調コイルの調整はグリッドディップメーターが無いため、受信機を測定器代わりに何十年も前の真空管時代に培った山勘、第六感で行いました。しかし、同調コイルにトロイダルコアーを使用したため、最初は全く周波数の検討がつかず、最初に適当に巻いてから巻き足したり巻き戻したりしながら目的の周波数に追い込むという根気が勝負の方法でやりました。その結果、3.3MHzから7.5MHzと、9MHzから22MHzの周波数をカバーすることができ、ほぼ当初の目標周波数範囲を満足する2個の同調コイルを製作することができました。ケース加工から調整までを土日の二日間で完成させることができました。

回路の特徴
1.入力同調コイルに空芯コイルよりNF(Noise Figure)が優れていると言われて いるトロイダルコアーを採用しています。
2.出力負荷に同調コイルに比較しNFが3dB以上優れている非同調の抵抗負荷を採用しています。
3.テレビのVHFチューナーのRF増幅及びMixer用に設計された、ローノイズ(NF=1.4dBTYP)のデュアルゲートMOS−FET 3SK131というミニモールドトランジスターを採用しています。
4.ACアダプター使用を前提としたため。ACラインからのノイズの影響を極力避けるため、コモンモードフィルタとコンデンサからなるノイズフィルタ回路を付けました。
5.アンテナスルー切り替えができ、通常はスルー状態で使用し、必要なときにだけプリアンプを機能させることができます。
6.ループアンテナ切り替えができ、ループアンテナ用同調回路付プリアンプとして使用できます。いろいろな周波数や大きさのループアンテナやスパイダーコイル、バーアンテナ等を接続できます。
7.短波帯2バンド対応で、3.3MHzから22MHzまでの放送バンドをカバーしています。
*上記1項から3項は、今回使用したキットの仕様です。なお、トロイダルコアは、9MHzから22MHz用はキット付属の(黄色)のものを使用し、3.3MHzから7.5MHz用は別途(赤色)のものを調達しました。

実際の使用感
 このプリアンプの内部ノイズは驚くほど静かです。かなり注意しないと分からないほどです。利得は受信機内蔵の20dBアッテネータと比較したところ、20dB以上はあるようです。

試しに17MHz帯でノイズすれすれで入感しており内容が今一つ良く聞き取れない放送局を受信しているときにこのプリアンプを入れると内容がほぼ聞き取れるようになりました。また、キャリアの存在はかすかに確認できるのだが全く何も聞こえない信号を受信しているときにこのプリアンプを入れると浮かび上がるように男性アナウンサーの声が聞こえてきました。その威力の大きさには驚くばかりです。

 しかし、良いことばかりではありません。使い方を間違えると返って逆効果になることが分かりました。効き目の強い薬に副作用があるのと似ています。逆効果になる具体的な例を掲げますと、コンデションが良くてバンド全体が強力に入感している場合や、目的周波数の近隣周波数に非常に強力な信号(放送局)がある場合です。受信機が過入力となり混変調を起こしてしまいます。

 もう一つ注意点として、プリアンプは目的の信号だけではなくノイズも同時に増幅しますので、ノイズの少ないときやノイズの少ない場所を選ばないとプリアンプの効果を十分に発揮できません。

 通常の受信ではアンテナスルーで使用し、ときと場合によってプリアンプを入れて受信してみるというのが正しい使い方となります。一定の条件が揃えばプリアンプは強力な助っ人となってくれるでしょう。それにしてもプリアンプを入れるとSメーターが小気味よく大きく振れて何とも言えない一種の快感を感じます。プリアンプ中毒になりそうhi。

 次に6石ラジオから外した中波用のバーアンテナを接続して、ループアンテナ用同調回路付きプリアンプとしての性能を確かめてみました。自宅の家の中で実験したためかノイズまで増幅してしまい効果は今一つでした。バーアンテナの方向やちょっとした位置でノイズの状態が大きく変化します。受信機のSメーターはV型ダイポールよりもはるかに良く振れますが、結果的にはSが弱くてもノイズの少ないV型ダイポールの方が良い結果となりました。乾電池動作にして屋外で使用するとか、ノイズの少ない場所で使用すれば効果を期待できそうです。ループアンテナでいろいろと実験して遊んでみるのには面白そうです。

製作上のアドバイス
1.アース配線は確実に行うこと。
 ケースは必ず金属製のものを使用して下さい。アルミ製のものが加工がしやすいです。今回ケースはTAKACHIのYM-180(180×130×40mm)を使用しました。ケース自体をアースに使用できますが、接触不良で思わぬトラブルが発生することがありますのでアースラインの配線を必ず行って下さい。

2.入力と出力の結合をできるだけ避けるように配置及び配線を行うこと。
 入力と出力が結合すると発振を起こすことがあります。入出力の同軸コネクターからSW1まで、及びRF増幅出力からSW1までの配線は必ず50Ω系の同軸ケーブルを使用しシールド編み線のアースも確実にとって下さい。 また、スイッチとスイッチ間、及び同調コイルやRF増幅入力、バリコンとスイッチ間の配線も極力短く配線して下さい。

3.RF増幅回路の半田付けは慎重に。
 前述のキットを使用する場合は、部品の取り付け位置さえ間違わなければ失敗することは無いと思います。キットに実体配線図が付属していますので組立は容易です。但し、今回は2バンド対応としたためキット付属のトロイダルコアとトリマはプリント基板上には取り付けずに、代わりにその空きスペースに0.01μFのコンデンサと100kΩの抵抗を取り付けます。
 プリント配線板のパターン間隔が狭いので半田付けのときに半田でブリッジさせてしまわないように慎重に行う必要があります。また、3SK131はミニモールドタイプで米粒程度(3mm*1.5mm)の大きさしかありませんので、一度半田付けに失敗すると大変な苦労をすることになります。

4.電源部のコモンモードフィルタ(C.M.F.)について。
 今回はコードレス電話に付いていたジャンク品を使用しました。自作する場合はトロイダルコアFT50#43にエナメル線を20回粗巻きしたものを使用して下さい。

5.同調コイルについて。
 9MHzから22MHz用の同調コイルはキット付属のトロイダルコアT25#6(黄色)をそのまま使用しました。3.3MHzから7.5MHz用はT94#2(赤色)を使用しました。二次側のエナ メル線の巻き数はカット&トライで適当に巻きましたので下表の巻き数は一応の目安と考えて下さい。

周波数 使用コア 線径 一次 二次
3.3-7.5M T94#2 0.4 15t 約60t
9.0-22.0M T25#6 0.2 5t 約22t


 尚、同調コイルは別途取り付け固定用のベーク基板等を準備し、トロイダルコアが振動で動かないようにナイロン線等で基板に固定して下さい。 


PBUTT18.GIF (2642 バイト)