★ Hallicrafters R-274/FRR(SX-73)レストア記 ★ Td
1.まえがき
京滋ミーティングの12月例会の席でOg氏より紹介頂きましたSX-73が12月25日自宅に届きました。お譲り頂いたのは横浜市のE氏です。Og氏が主催されている京滋ミーティングのホームページに連載されているYm氏の力作であるアメリカの通信機メーカー物語シリーズを読まれて感銘され、SX-73の保守管理の後継者を打診されてきたのが契機です。
2.準備
早速、Ym氏にSX-73の回路図を郵送して頂き、正月休みに入った29日からレストア作業に入りました。レストアを開始するにあたり、コリンズライン等を完全レストアされたことのあるOMからアドバイスをもらっていました。それは、いきなり100Vを印加せずに50V位から印加し、異常な匂いや発熱が無いことを確認することです。
スライダックトランスを持っていませんが、SX-73の電源トランスは、260V、234V、210V、190V、130V、115V、105V、95VのAC入力に対応していますので、まず190Vのところに100Vを接続して様子をみることにしました。ダイヤル照明用のパイロットランプが薄暗く点燈しました。もちろんスピーカーからはうんともすんとも全く何も聞こえません。
しばらく様子をみていましたが特に異常がなかったため、次に115Vに接続しました。パイロットランプ明るく点燈し、真空管のヒーターが橙色に光り、定電圧放電管のグローが紫色に光り始めました。ボリュームを廻すとスピーカーがらカサカサというノイズが聞こえてきました。
受信バンドを切り替えるとスピーカーから大きなノイズが聞こえます。6バンド切り替えですが、バンド1の540kH〜1270kHにし、ダイヤルを1143kH(KBS京都放送)付近に合わせると番組が聞こえてきました。バンド4の7MHz〜14MHz、バンド5の14MHz〜29.7MHzも問題無く受信できました。周波数はいずれも100kHz以上狂っているようです。それ以外のバンドは受信できませんでした。
この状態で4時間程シャーシー内の部品の様子を観察をしながら受信を楽しみました。IFの帯域幅が6段階に切り替えできるのですが、この切り替えスイッチは接触不良を起こしており、切り替えても帯域幅の変化が今一つ良く判らない状態でした。
ACを105Vにつなぎ変え、各真空管のプレート電圧、スクリーングリッド電圧、カソード電圧をテスターで調べたところ、回路図には電圧まで載っていませんので明確ではありませんが、経験的に特に異常な電圧値はありませんでした。
3.レストア内容
さて、いよいよレストアにかかることにしました。最初はパネルやケースの外観の掃除です。中性洗剤(マイペット)で汚れをふき取りました。またたく間に雑巾が真っ黒になりました。内部は掃除機でほこりを吸い取る程度にしました。ダイヤル部分はほこりが結構たまっており、ほこりを取り除きにくいこともあり結構時間がかかりました。
バンド切り替えは、真空管時代のテレビのチューナーと同じターレット式のロータリー切り替えとなっており、接触端子部分をエタノールを染み込ませた布でふき取りました。IFの帯域幅切り替えスイッチは6連6段のロータリースイッチとなっており、これも同じくエタノールを染み込ませた極細の綿棒で注意深く接触子部の汚れをふき取りました。接点復活剤は、強力な表面活性剤のためにスイッチの樹脂部にダメージを与えるため使用しませんでした。
周波数の調整は第一局発の周波数を調整すれば良いのですが、トラッキング調整を行うには周波数の高い方と低い方でC(キャパシタンス)またはL(インダクタンス)の両方の調整が必要です。しかし、実際にどのトリマーを調整したら良いのか判りません。第一局発6C4に近くてもっとも調整しやすい位置にあるトリマーを調整して周波数の高い方をダイヤルと合わせ込みしました。感が当たったのか調整は正解のようで、周波数全体的にほぼダイヤルと実際の周波数が合致するようになりました。完全なトラッキング調整は次の機会に行いたいと思っています。ただ、バンド5の14MHz〜29.7MHzだけは周波数を合わしきれませんでした。多分他の定数が変化してしまっておりトリマーの調整範囲外になってしまっており、実際より表示が50kHz程高い方にずれたままですが断念しました。
高周波増幅部の調整は簡単でした。周波数の高い方で適当に放送局を受信しながら最大感度にするだけで済みました。
第1IFの6MHzおよび第2IFの455kHzの調整が残っていますが、これはシグナルジェネレータとシンクロスコープが無いと下手に触らない方が賢明と思い断念しました。これは測定器が借りられれば後日調整することにします。
4.SX-73について
さて、実際の受信の感想を述べる前に、SX-73についてJamming232よりYm氏の文章を引用させて頂き、それに若干の補足説明をします。
「SX-73(1952〜1953)ハリクラフターズ社の受信機の中では最も精巧で最も高価な機種です。丁度同じ頃発売されたハマーランド社のスーパープロSP-600型と細部はともかく基本的には非常に似ています。軍用中心に設計されたらしくR-274/FRR或いはR-274D/FRRという別名がついています。SP-600型にも同じ軍用の型番がついていたと言われています。中間周波数は6.000MHzと455kHzで、第一局発はSP-600型と同じくHFO方式です。価格は$975.00でした。ちなみにSP-600型は$985.00でした。
バンド切り替えはハリクラフターズ社の製品としては珍しくターレット方式を採用しており、周波数は540kHz〜54MHzとなっています。同調は精密な歯車機構により行われバンドスプレッドを用いないシングルノブ方式です。外見上ダイヤルは一つですが一番下の目盛りが副尺(ロッギングダイヤル)でその上にある目盛りとは別に動くようになっています。バンドスイッチを回して行くとダイヤルの両端にある矢印が上下して受信しているバンドを指示します。回路図を示しておきますが20球式でSP-600型によく似ておリ真空管受信機としてはかなり複雑です。またターレット式のバンド切り替え機構になっていることがよく示されています。
本機種は何故かハマーランド社のスーパープロSP-600型ほど普及しなかったようで、史上最も多量に製造されたSP-600型と違って現在では手に入れるのにも一苦労あるようです。」
高周波増幅部は2段増幅となっており初段管はgmの高いシャープカットオフ型の6AG5、2段目にはリモートカットオフ型のお馴染みの6BA6が使用されています。第1混合部は6BE6、第1局発部は別に6C4を使用して発振の安定性を高めています。第1局発部には固定周波数受信用(6チャンネル切り替え)に6BA6による水晶発振部が別に設けられています。このフロントエンド回路部分はアルミダイキャストシャーシーが使用されており構造的にも安定性の向上が図られています。
第1中間増幅部は6MHzで6BA6による1段増幅です。第2混合部は6BE6です。第2局発部は6BA6に水晶発振で6.495MHzを得ています。第2中間増幅部は455kHzで6BA6による3段増幅となっています。
帯域幅の切り替えは中間周波トランス(IFT)の結合度をスイッチにより3段階に切り替えられるようになっています。中間増幅3段目に455kHzの水晶振動子1個によるフィルター回路が組み込まれています。また、3段目から分岐して6BA6によるバッファーアンプを経由してIF出力が50オームの同軸ケーブルで取り出せるようになっています。このIF出力は音声以外の信号を取り出すために設けられたものと推測されます。RTTYのようなものなのか暗号信号解読用なのか大変興味深いところです。
次に、双2極管6AL5で検波とANL(自動ノイズリミッター)を行っています。ANLは非常に簡単な回路ですが現在の最新の受信機と比較してもすばらしい効果があります。AGC(自動利得調整)はもう1本6AL5を使用してAGC電圧を得ています。AGCは高周波増幅部と第2中間周波増幅にかけられており、強力な信号が入ってもまず飽和することは無いと思われます。SメーターはこのAGC電圧で駆動させています。
低周波増幅部は6AT6、低周波出力部は6Y6G、整流回路部は5U4Gが使用されています。負荷変動による電圧変動を少なくするためにバラスト管とチョークコイルによる平滑回路が、AC電源変動に対する電圧変動を少なくするために定電圧放電管が使用されています。
高周波増幅部のトリマーやIFTの調整は大型のマイナスドライバーで調整できるように、また、金属性ドライバーのストレー容量のよる影響が出ないように配慮されています。フロントエンド部のアルミダイキャストシャーシーと言い、完璧な電源回路と言い、高周波部分で避けられない部分を除き空中配線はほとんど無く、ほとんどの部品は端子板に半田付けされており、アマチュア機器とは一線を画する設計となっています。
5.受信性能
さて、簡単なレストアが終わり実際の受信の状況報告です。バンド切り替えや帯域切り替えスイッチの接触不良問題は完全に解決しました。周波数のずれもほぼ解決しプラスマイナス20kHz程度の精度で読み取れるようになりました。
一番の印象は、とても静かだということです。放送が入っていないと本当に動作しているのかと心配になる程です。アンテナを外した状態でボリュームを上げても何も聞こえないと言っても過言ではない程です。放送を受信すると急に動作を始めたかのようにスピーカーから音がでます。決して感度が悪い訳ではありません。感度はAR7030のプリアンプのオン状態と全く同じです。弱い信号であればSX-73の方が聞きやすいです。
第二の印象は、周波数安定度の良さにびっくりしました。スイッチオン5分後に受信して2時間程同じ放送局を聞いていたのですが全く周波数ドリフトを起こしません。昔、9R59受信機のときはしょっちゅうダイヤルで追いかけなければなりませんでしたし、TX-88A送信機の外付けVFOですらスイッチオン後しばらくは周波数ドリフトに悩まされたものです。そんな昔の経験から考えると天と地の差があります。とても50年前の受信機とは思えません。
次に帯域幅切り替えですがIFTの選択度がBROAD、MED、SHARPの3段階に、水晶フィルターの選択度が同じく3段階の計6段階に切り替えられます。感じとしてはIFTのBROADが14kHz位、MEDが10kHz位、SHARPが6kHz位です。SHAPの位置で大抵のビート妨害は消えます。水晶フィルターはかなりこもった音になります。AM放送を聞く限り水晶フィルターの選択度を切り替えてもさほどの変化はありません。CWのときに威力を発揮するものと思います。
AR7030の音も結構良いのですが、SX-73のIFTのBROADにはかないません。内部ノイズの少なさと音の抜けの良さからSX-73の方が一段上です。
SX-73にはBFOが付いていますので、SSBの受信が可能ですが、手動ECSS受信というような芸当はできません。やってできないことはないかもしれませんが。そういう意味では究極のDX受信では現代の受信機には到底及びません。また、周波数読み取りも、20kHz〜30kHz程度の精度です。100kHzのクリスタルマーカーを使用したとしても10kHzを読み取るのが精一杯と思われます。デジタル周波数カウンターで第1局発の周波数を読むという方法もありますが。
ANLをオンにすると若干音が歪みますが自然ノイズが非常に良くカットされます。
6.まとめ
スピーカー出力は600オームとなっています。E氏が600オームのスピーカーの入手は困難だろうといことで同梱していただきました。スピーカーそのものは8オームでしたが、スピーカーボックスに600オームから8オームに変換するトランスが内蔵されていました。スピーカーは最悪トランジスタアンプ用の出力トランスを使用して8オームに変換しようと思っていましたので、考え方は同じでした。600オームというハイインピーダンスの良さはスピーカボックス内蔵のボリューム抵抗で音量調整が可能だということが理解できました。構内放送のスピーカ音量が部屋毎に音量調整できるのと同じ原理です。
以上簡単ですが第一回SX-73レストア記を終わります。今後レストアをどう進めるのか思案中です。また、京滋ミーティングのDXペディションにて是非皆さんにSX-73の音を聞いてもらいたいと思います。そのときは輸送のお手伝いをよろしくお願いいたします。