国家広播文物館   update:2017/03/20

 国家広播文物館は1999年に開設された台湾唯一の放送博物館である。現在、中央広播電台に所属するこの博物館は、現在も放送局として機能しているが、建物は日本統治下に建設された民雄放送所として建設されたものである。1938(昭和13)年に建設が始まり、1940(昭和15)年9月28日に670kHz、100kW の放送局が開設したと『ラヂオ年鑑』にある。当時、台北、台中、台南にあった放送局はすべて1kW の出力であったので、民雄放送所が東南アジアから中国大陸の江蘇省、南京等の地区をカバーし、当時の日本軍の軍事及び心理作戦用として活用されていた。
 館内には100件近い資料が陳列され、その中でも特に貴重なのは、民雄送信所当時に使用されていた日本NEC社製の送信機(1937年製造)である。また、冷戦時代にアメリカから寄付された送信機もある。
 文物館の敷地内にも、館の外の水田の中にも鉄塔が林立する。鉄塔は、創建当時は206mの高さがあったとあるが、現在は途中で切り取られている。
 また、民雄駅から文物館へ向かう途中には、民雄放送所招待所という和式の建物が復元され、当時建設に携わった人達の宿泊所として機能していたとされる。
 入館するとビデオを見せてくれる。日本語版であった。また、展示物の説明板は、中国語、英語、日本語で掲示されている。

建物

 
NEC社製 MB-15-A 100kW中波送信機
 この送信機は、1940年の民雄放送所設立に伴い運転を開始した。数少ない真空管冷却システムを備えたもので、部品交換をしやすくするため重要なユニットは二つずつ取り付けられている。台湾が光復(祖国復帰)を果たしてから中央放送局は米国と協力し、1952年に送信出力を150kWに強化、中国大陸の華中地区に向けて放送した。この送信機は今も使用が可能。60年を超える放送の歴史を持つことから、「生きた骨董品」と称えられ、国立放送博物館の「最大の宝」となっている。(説明文より)

 
MB-15-A 100kW中波送信機のクーリングシステム
 本館の二階にあるMB-15-A 100kW中波送信機の真空管が過熱状態となるのを避けるため、この冷却システムが使われている。蒸留水はピンク色のパイプを通じて二階から一階にある大きな緑のタンクに流れ込む。黄色いパイプの中は館外にある地下貯水池からの水が充満している。蒸留水と地下水は緑のタンクで冷却されてからモーターで二階にある送信機に送られ、繰り返し使用される。(説明文より)
 写真右は、日本統治時代、アメリカ軍の機銃掃射攻撃を受けた際の弾痕である。

 
35kW短波送信機 FRT-6B型/1952年
 米国の援助を受けていた時代、1966年に寄付された送信機で、米国の海軍用通信送信機だったもの。360°の可動対数周期アンテナを使用して送信する。中央放送局は35kWの短波送信機に改造した。30あまりの異なる周波数に変換しながら使用でき、1955年まで送信業務に当たった。(説明文より)


10kW短波送信機 SHF-510B型/1953年
 米国の援助を受けていた時代、1961年1月に寄付された送信機で、米国の海軍用通信送信機だったもの。360°の可動対数周期アンテナを使用して送信でき、中央放送局は後に10kWの短波送信機に改造。周波数を固定しない方式で、特別番組の放送に用いられた。1995年まで送信業務に当たった。(説明文より)

 
100kW中波送信機 50HG-2型/1950年
 米国から寄付された送信機。1963年10月10日の双十国慶節に当時救国団の主任を務めていた蒋経国氏(後の総統)と米国の代表が民雄を訪れ、放送開始のセレモニーを行った。アンテナタワー3基、周波数1200kHzを用い、台湾語と客家語で台湾の声を中国大陸・華南地区に向けて放送した。放送は30年間続いた。(説明文より)

 
 水田の中にあるアンテナ塔の跡。当時のものかは不明。右写真はアンテナ塔から放送所までケーブルを架設した支えと思われる。

 
旧民雄放送所招待所
 現在の中央広播電台民雄分台は、日本占領期民雄放送所と称されていた。この招待所は1940年に作られ、放送所建設時の工員達の宿舎として利用されていた。1999年9月21日に発生した大地震で建物が被害を受けたが、地域の人達の奔走で修復が行われ、2001年7月26日に歴史建築として登録された。(現地の説明板より筆者が訳出)

■開館:9:00~11:00 13:30~16:00
■休館日:土曜日、日曜日、月曜日
■入館料:NT$50
■所在地:中華民国嘉義県民雄郷寮頂村民権路74号
 TEL:05-2262016 FAX:05-2266371 E-mail:museum@rti.org.tw
■交通:「民雄」駅から徒歩15分
■参考:中央広播電台 http://www.rti.org.tw
     国家広播文物館ブログ http://museumms.blogspot.com

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