戦後のアルゼンチンの標準周波数報時局 2023.8.28 |
(1)アルゼンチン~Monte Grande LQB・LQC・LSD |
図1 ブエノスアイレスの地図 図2 WRTH1980年版の記載 LSD局の開局は1931年である。戦後は「第20冊(1947)」から記載された。LSD(8650kHz)は23:50の送信で、LQC(17660kHz)は11:50の送信であった。「第25冊(1952)」では周波数がLSD(9800kHz)、LQC(17555kHz)となり、報時時刻はどちらも11:50と23:50になった。「第27冊(1954)になるとLSD局は記載がなく、LQC(17550kHz)、11:50とLQB9(8167.5kHz)、23:50となった。「第37冊(1964)」ではLQC15(17551.5kHz)のみとなり、報時時刻は10:05/11:50/22:05である。LQC局の記載は「第48冊(1975)」まであった。「第47冊(1974)」では送信地がMonte GrandeからPlanta Gralに変更になった。 WRTHでは「WRTH1980」から記載が始まり、「WRTH1988」まであった。ここにはLQB9(8167.5kHz:5kW)、22:00~22:05/23:45~23:50、とLQC20(17550kHz:5kW)、10:00~10:05/11:45~11:50の記載があった。報時信号の5分前から"CQと局名"がモールスで送信され、秒信号は0.3秒長、分信号は0.5秒長となっている。管轄をしているServicio Internacional de la Horaは国際時間部とでも訳したらよいのだろうか。この局について川口大助氏は「アルゼンチン陸軍の管掌する時報局」(*1)としている。LQB9局のQSL画像を入手できたので調べたところ"Instituto Geográfico Militar"(陸軍地理研究所)とあった。この研究所は2009年に"Instituto Geográfico Nacional"となっている。次に出てくるLOLは海軍が管轄していたことを考えると、陸海軍が互いに対抗して運営していたようにみえる。 図3 LQB9のQSL (*1)川口大助「日本で聞こえる世界の時報局」『短波』1980年12月号 |
(2)アルゼンチン~Buenos Aires LOL |
図4 WRTH1957年版の記載 LOL局はアルゼンチン海軍が所管する天文台(Observatorio Naval Buenos Aires:ONBA)管轄の局である。戦前から存在する局で、開設は1915年である。ONBAの創立は1881年までさかのぼる。アルゼンチンでは1894年に、それまで地域ごとにバラバラであった時間を統一し、スペインの都市コルトバと4時間16分48秒2の時差をもつ時間をアルゼンチン標準時間とした。その後、1920年に世界標準時を受け入れた。 戦後、LOLは「WRTH1957」にあらわれ、2.5MHz/5MHz/10MHz/15MHz/20MHz/25MHz、それぞれ2kWの出力で、11:00~12:00/14:00~15:00/17:00~18:00/20:00~21:00/23:00~24:00に信号を発した。「WRTH1958」では2.5MHz/20MHz/25MHzがなくなり、時間が11:00~3:00となった。「WRTH1969 」までは、Observatorio Naval だったが、「WRTH1970」からはServicio de Hidrográfia Naval(海軍水路部)と部局名が加えられた。 図5 Observatorio Naval 図5に天文台の写真を示す。建物自体にも庭にもアンテナが林立する。ここから送信していたのは間違いないようだ。 LOLの送信フォーマットを図6に示す。これはLOLへ資料請求をした際に送られてきた無記入のQSLカードの裏面に描かれていたものである。毎時00から10分ごとに3分間の1000Hzトーンの秒信号の期間がある。また、毎時05分から10分ごとに3分間の440Hzトーンの秒信号の期間がある。つまり変調のトーンは5分ごとに異なる周波数になっているということになる。これらの期間のうち、55~59秒目は無音となる。アナウンスは、毎時3分から5分ごとに2分間の期間で行われ、最初の01~15秒にDUT1コードが送信され、その後1分01秒からLOLのモールスが3回、1分50秒から音声アナウンス"Observatorio Naval Argentina"ののち時と分がアナウンスされる。 図6 LOLの送信フォーマット 「WRTH2023」によれば、現在LOL局は10MHz、2kWで平日の14:00~15:00に運用しているとある。しかし、この周波数はBPM、WWV、WWVHも使用しているため、確認は困難である。 QSLを図7に示す。 図7 LOLのQSL 【図の出典】 図1 ブエノスアイレス市内地図 筆者作成 図2 WRTH1980年版の記載 wrth.pdf [ADDX作成] 図3 LQB9局のQSL https://www.iz3enh.it/tvQsl.php 図4 WRTH1957年版の記載 wrth.pdf [ADDX作成] 図5 Observatorio Naval GoogleMapの写真 図6 LOL局の送信フォーマット LOL局のQSLフォルダーの裏面 図7 LOL局のQSL 筆者所有 |
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