戦後のカナダの標準周波数報時局 2023.8.26 |
(1)カナダ~Ottawa CHU |
図1 オタワの地図 図2 WRTH1956年版の記載 CHU局はカナダのNRC(National Research Council)下のINMS(Institute for National Measurement Standards)が管轄する報時局である。オタワの南西15kmの地より、3330kHz(3kW)、7850kHz(10kW)、14670kHz(3kW)で24時間運用している。 図3 CHUの送信アンテナ 図4 CHUのコントロールルーム 最初にCHUが登場したのは「WRTH1956」である。当時はまだDominion Observatoryの管轄だった。NRCに移管するのは1970年のことである。3330kHz(0.3kW)/7335kHz(3kW)/14670kHz(0.3kW)の運用だった。この頃は時刻アナウンスはEastern Standard Time(*1)であった。アナウンスの時刻がUTCに変わるのは1990年4月以降である。『理科年表』にも「第36冊(1963)」から記載された。使用周波数の一つ7335kHzが現在の7850kHzになるのは2009年のことである。ITUの放送バンドの再配分により放送と混信を起こしたため、現在の周波数に変更された。「WRTH1965」ではすべての波の出力が3kWとなった。「WRTH1972」では7335kHzが10kWとなった。 図5 CHUの送信スケジュール CHU局の送信フォーマットは次のようである。00秒:0.5秒長の秒信号、01~28秒:0.3秒長の秒信号、29秒:無音、30~50秒:0.3秒長の秒信号、51~59秒:局のIDと時刻アナウンス。正時の最初の秒信号は1秒長で、その後01~09秒は省かれる。DUT1コードは01~16秒に送信され、ダブルトーンの数でDUT1情報をあらわす。01~08秒が強調されるとDUT1は正の値を、09~16秒が強調されるとDUT1は負の値となる。値は強調される秒信号の数で表す。時間情報のコードは31~39秒の秒信号に含まれる。データはFSK(Frequency Shift Keying)を使って、2225Hzが「1」を、2025Hzが「0」をあらわす。データはスタートビット(1ビット)、データビット(8ビット)、ストップビット(2ビット)の計10ビットで構成され、1つのパケットは10バイトで構成される。すなわち110ビットが一つの固まりとなる。31秒目のデータをFormatBと称し、32~39ビットのデータをFormatAと称する。これらのデータは300bps(bit/second)で送られるので、110ビットを送信するには366.66mSかかる。31~39秒の送信スケ-ジュールを図3E-6に、送信フォーマットを表1に示す。 表1 CHUの送信フォーマット 音声アナウンスは、英語とフランス語で出る。英語では"CHU Canada, Coordinated Universal Time: thirteen hours fifty-nine minutes"のように、フランス語では"CHU Canada, temps universel coordonné:treize heures cinquante-neuf minutes"のように出る。時刻の部分は変わる。英語とフランス語の順番は毎回入れ替わる。 図6 CHUのQSL(左:1958年頃、右:1999年頃) 「WRTH2023」によれば、現在CHU局は3330kHz(3kW)、7850kHz(5kW)、14670kHz(3kW)で24時間運用されている。 Web: https://nrc.canada.ca/ Email: radio.chu@nrc-cnrc.gc.ca 住所: National Research Council Canada, 1200 Montreal Road, Bldg M-36, Ottawa Ontario K1A0R6, Canada (*1)カナダの6つのタイムゾーンの一つで、UTC-5時間である。Ottawaはこのゾーンに属する。 【図の出典】 図1 オタワの地図 筆者作成 図2 WRTH1956年版の記載 WRTH.pdf 図3 CHUの送信アンテナ https://www.radioworld.com/global/chu-canadas-time-station 図4 CHUのコントロール室 同上 図5 CHU局の31~31秒の送信スケジュール CHUのウェブサイトを参考に筆者作成 https://nrc.canada.ca/en/certifications-evaluations-standards/canadas-official-time/nrc-shortwave-station-broadcasts-chu 図6 QSLカード 左はDSWCIのページ(http://www.dswci.org/specials/njj/QSL_World/full/074%20CHU.jpg)より、右は筆者所有 |
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