戦後のイタリアの標準周波数報時局     2023.8.23
  (1)イタリア~Rome IAM

図1 ローマの地図

図2 WRTH1963年版の記載


  IAMは郵政高等研究所(Instituto Superiore delle Poste delle Telecommunicazioni)が管轄する報時局である。「WRTH1963」に初めて記載され、5MHz、1kWで、日曜の7:30~8:30を除く毎日電波を出した。送信地はローマの南に位置する。
 送信フォーマットは、00秒に20mS長の分マーカー、01~59秒に5mS長の秒マーカーを発する。毎時、0、15、30、45分にモールスと音声(イタリア語)で局IDを送出する。また、毎時5、20、35、50分に"IAM IAM IAM"と時刻をモールスで発する(*1)。
 IAM局は「WRTH1997」まで記載があった。1998年初めに送信機が壊れ停波した(*2)。

(*1)"Radio Time Signals",Radio Navigational Aids,NO.117,2014 Edition
(*2)"Standard Frequency and Time Signal Station on Longwave and Shortwave",Klaus Betke,2007.5 https://digilander.libero.it/occultazioni/segnali-di-tempo.pdf

 
  (2)イタリア~Torino IBF
 
図3 トリノの地図

 IBFは国立電気技術研究所(Instituto Electrotecnico Nazionale Galileo Ferraris)の管轄する報時局である。Galileo Ferrarisは19世紀の物理学者・技術者の名前である。この研究所は1934年に創立し、2006年に国立計量研究所(Instituto Nazionale di Ricerca Metrologica:INRiM)の一部門となった。WRTHにはIAMと同じ版に登場した。周波数は5MHz、0.3kWで平日の7:00~7:30と11:00~11:30に送信した。同じ5MHzを使用しているのは、ローマがイタリア半島の「足」の膝あたりなのに対して、トリノはフランス国境に近いので、電波の及ぶ範囲をお互い補っているのではないかと思われる。「WRTH1967」では出力が5kWとなり、送信時間も増加し、6:45~7:00と8~17時台の45分から15分間となった。

図4 国立電気技術研究所の建物

 1963年頃の送信フォーマットを以下に記す。00~05分:秒パルス、05~10分:1kHzトーン、10~30分:秒パルス、局IDは00、10、20、30分にモールスで局名と時刻を送信する。音声アナウンスは毎30分ごとに行う。音声アナウンスは以下のように、イタリア語、フランス語、英語で行われる。イタリア語:"Emissioni di frequenza entempo campioni dall'Instituto Electrotecnico Nazionale."、フランス語:"IBF, Signaux horaires et fréqence étalon de l'Institut Electrotechnique National, Turin, Italie."、英語:"IBF, Standard Frequency and Time Signal from the National Electrotechnical Institute, Turin, Italy."(イタリア語は「WRTH1966」、フランス語・英語は「WRTH1970」)

 IBF局は、1990年代の初めに停波した(*2)。


図5 IBFのQSL


【図の出典】

図1 ローマの地図 筆者作成
図2 WRTH1963年版の記載 WRTH.pdf CD[ADDX作製]
図3 トリノの地図 筆者作成
図4 国立電気技術研究所の建物 GoogleMapの写真
図5 IBF局のQSL https://www.utilityradio.com/stations/europe/i/i-215-kplt.jpg



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