UPDATE: 2020.06.21

1.はじめに

 BPMに対しては、長い間返信がありませんでしたが、このたび中国語電子メールで漆溢(QiYi)氏と連絡を取ることができ、受信報告に対する返信もありました。
 中国の標準時報局は、BPMだけでなく、長波のBPL、電波時計用のBPCと3局あります。

2.歴史的な変遷

 BPMは中国科学院国家授時中心(National Time Service Center)に所属し、陜西省西安市臨潼にある陜西天文台の中にあります。以前BPMは陜西天文台に所属していたようですが、2001年に組織改編が行われたようです。陜西天文台は1966年に創設され、1970年には時の周恩来首相が短波での標準時報局の試験電波発射を決めています。1970年代の初めからこうした研究は行われていましたが、時報局BPMの正式の発足は1981年の中国国務院(日本の内閣にあたる)の決定によります。

HP製5071A Cs原子時計HP製5071A Cs原子時計

BPMの建物BPMの建物

3.基準信号の発生

 基準信号は、NTSCの時間基準実験室で作られます。基準信号はHP(Hewlet Packerd)製5071Aセシウム原子時計によって作られ、GPSを使った比較や、通信衛星の双方向比較などで精度を保持しています。NTSCではこの5071Aを6台保有し、安定度1×10E-14、精度1×10E-13を保持しています。

4.BPM

 短波時報局BPMの概要は以下の通りです。但し、送信出力はわからなかったので、NICT(情報通信研究機構)の世界の標準周波数報時局の一覧を参考にしました。

BPMアンテナ群BPMアンテナ群

(1)送信地:陜西省西安市臨潼 (109°31'E、35°00'N)

(2)送信周波数: 2.5MHz、5MHz、10MHz、15MHz

(3)送信出力:20kW(但し2.5MHzは10kW)

(4)送信時間:2.5MHz(16:30~10:00JST)  5.0MHz(24h)  10MHz(24h)  15MHz(10:00~18:00)

(5)送信スケジュール:

    00~10分 秒信号(1kHz、10mS)、UTC

    10~15分 無変調波

    15~25分 秒信号(1kHz、10mS)、UTC

    25~29分 秒信号(1kHz、100mS)、UT1

    29~30分 局ID

    30~40分 秒信号(1kHz、10mS)、UTC

    40~45分 無変調波

    45~55分 秒信号(1kHz、10mS)、UTC

    55~59分 秒信号(1kHz、100mS)、UT1

    59~60分 局ID

(注)分信号は、300mSの長さ。

(6)到達範囲:半径約3000km

(7)時報の精度:1×10E-3

(8)ID:「BPM」×10回(CW)、その後「BPM,標準時間標準頻率発播台」×2回(女性の声)

 中国語部分は、「biaozhun shijian biaozhun pinlu fabotai」と発音する。

BPM送信機BPM送信機

5.BPL

 BPLは長波の時報局で、1986年に陜西天文台に設置されました。BPLは、先に述べたCRLの日本標準時グループのウェブページにも掲載されておらず、実際に100kHzを受信してみましたが、少なくとも私のところでは入感せず、その存在がよくわかっていません。しかし、そのシステムは高い精度を誇っているようで、その技術レベルに対し1988年に「国家科技進歩一等賞」を受賞したと書かれています。

BPL送信機BPL送信機

(1)送信周波数: 100kHz

(2)送信出力:(不明)

(3)送信時間:14:30~22:30JST

(4)到達範囲:半径約1000~2000km

(5)時報の精度:1×10E-6

基準信号発生室基準信号発生室

6.BPC

 BPLについては陜西天文台のウェブページにもありましたので、その存在を知っていましたが、今回の電子メールのやりとりの中で「BPC」という時報局(?)が浮かび上がってきました。メールによれば、「BPC(低頻率時碼台、68.5k、用于電波?)」とあります。どうやら電波時計用の時報電波のようです。1994年に実験が成功し、1999年に毎日5時間の試験電波を発射する実験局が発足しました。68.5kHzで100kWの出力となっており、送信機はオールソリッドステートと表記されています。2000年に実用局となったと思われます。送信時間等については不明。ただし、中国国内での電波時計の普及はこれからであり、今後の進展が注目されます。

7.おわりに

 BPLやBPCなど中国あるいはアジアの長波帯の電波は、日本で受信できる可能性があり、電波時計の普及が国際的に進むことで、こうした長波局の出現が進むことでしょう。現に、タイやマレーシアでも電波時計用の送信局の建設が計画されているそうですから、標準電波局の受信実績は増えるものと思われます。

8.追記

 さて、原稿を書き上げた後に、BPMからQSLカードが届きました。

BPMのQSLカード送られてきたQSLカード

新しいBPMのQSLカード2004年に送られてきた新しいQSLカード

【資料】

○中国科学院国家授時中心网站  https://www.ntsc.ac.cn/  (中国語フォントのインストールが必要)

○CRL日本標準時グループウェブサイト(現在は、NICT(情報通信研究機構))  http://jjy.nict.go.jp/

このページに使用した写真は、QSLカードを除き、上記「中国国家授時中心」のウェブサイトからのものです。