戦前のアルゼンチンの報時局     2023.6.7
 (a)Dorse North LIH(LOL)  

図1 ブエノスアイレス市内地図

 Dorse Northでは見つけることができず、経緯度で調べたところ、ブエノスアイレス市内を指した。LIH局は1915年に開設され、周波数375kHz、2:00に報時信号を出した。『理科年表』第3冊(1926)では300kHzに変更され、「第9冊(1933)」で285kHzとなった。この時には短波8690kHzも追加され、報時時刻に14:00が追加された。この局は「第6冊(1930)」でコールサインがLOLに変更されている。LOLは戦後も同じコールサインの局があるので、この局のはじまりがLIHであったと考えられる。

 報時信号の情報を提供する天文台は、ブエノスアイレス市内にあるObservatorio Navalという海軍の所轄する天文台であると思われる。創設は1881年、港にいる船に現地の天文時間を提供する目的で設立された。送信地は「第12冊(1936)」では場所が天文台に移っている。

 現在のLOL局は海軍の管轄なので、LIH局も海軍が設立したのではないかと思われる。

 
 (b)New Years Island LIO

図2 アルゼンチン最南端の地図

 『理科年表』の経緯度で調べると、ロスエスタードス島(Isla de los Estados)近くの海上を指す。ロスエスタードス島はアルゼンチンの最北端ホーン岬の近くにある。New Years Islandで調べるとIslas Ano Nuevoと出て、Isla Observatorioが出てきた。名前からして関係が深そうである。この島は先のロスエスタードス島の北10kmのところにある灯台しかない島である。灯台は1901年に創設されたとある。ホーン岬を通過する船舶の安全のために設置されたのであろう。

 LIO局の設立年は不明、『理科年表』第5冊(1929)に最初の記述が現れる。周波数167kHzで1:50に報時信号を送出した。「第14冊(1938)」以降の記述はなく、報時情報を提供する天文台の記述もない。

 (c)Monte Grande LSF・LSD

  Monte Grandeはブエノスアイレス市内南部で、近くにはEzenza国際空港がある。LSF・LSD局の開局は1931年で、LSF局が19607kHzで11:45に、LSD局が8831kHzで23:45に信号を送出した。『理科年表』第11冊(1935)ではLSF局のコールサインがLQCに、周波数が17650kHzに変更された。「第14冊(1938)」ではLSD局のコールサインがLSD2に変更になった。LSD2は「第19冊(1943)」では元のLSDに戻っている。「第17冊(1941)」ではLQC局の周波数が17550kHzとなった。以下「第19冊(1943)」まで記載がある。時刻情報を提供した天文台はBelgrano天文台とあったが、調べたがわからなかった。

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