戦前のブラジルの報時局     2023.6.7
 (a)Island of Governor SOH  

図1 リオデジャネイロの地図

 ガヴァナー島(ゴヴェルナドール島:Governador)はグアナバラ湾内にあり空港がある。この島の東端付近に海軍基地があり、ここが発信地ではないかと思われる。SOH局は1918年に開局し、『理科年表』第2冊(1925)によれば周波数167kHzで0:00と14:00に信号を発した。「第5冊(1929)」まで掲載されていたが、「第6冊(1930)」からはSPYという別の局になった。

 
 (b)Arpordor SPY(PPR)

 SOH局に代わって登場したのがSPY局である。この局の位置を経緯度で調べるとリオデジャネイロ市の南端、Praia do Arpoadorという有名なビーチに近い場所にある。1928年の開局となっており、SOHの代わりに設置されたように思われる。500kHzで0:00と14:00に信号を発した。『理科年表』第7冊(1931)では地名がRio de Janeiroに、コールサインがPPRに、周波数が300kHzに変更されているが、経緯度はArpoadorと同じである。PPR局は戦後にも存在したので、SPY局が前身のように思われる。

 (c)Observatório Nacional PPE

図2 Observatório Nacional

 国立天文台が直接管轄をしている局である。局の位置はリオデジャネイロ市内のサンジャヌアリオ(São Jauário)の丘にある。天文台の創立は1827年である。PPE局の最初の登場は『理科年表』第7冊(1931)なので、1930年頃には報時業務が開始されていたと思われる。「第7冊(1931)」では、周波数8720.9kHzで0:00と14:00に信号を発した。「第11冊(1935)」には、PPE(18180kHz、0:10と8720.9kHz、21:10)の他に、PPM、PPX、PPZというコールサインの局があらわれ、10310kHz、20720kHz、18180kHzで0:00に報時信号を送出したとある。しかし、これらの局は翌年版には記載がなく、元のPPEだけに戻っている。1933年9月~11月には第2回万国経度測定が行われたので、このための臨時の局ではないかと思われる。『無線報時史』には、この時PPM局が10310kHzの送信をもって参加したことが書かれている。「第13冊(1937)」を最後にPPE局の記述は途絶えたが、たんねんに調べると「第19冊(1943)」にPPEの記述を見つけた。8721kHz、0:10とあった。


【図の出典】
図2 Observatório Nacional "Wikipedia"(ポルトガル語版)"Observatorio Nacional"

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