図1 Nauen送信所Nauenはベルリン郊外にある送信施設で、1906年に開局した。『理科年表』ではPOZ局の開局は1924年となっているが、「Modern Wireless」(1923年2月)の"Greenwich Time by Wireless"という記事にはFL局と並んでPOZ局が記載されている。この記事でPOZ局は、周波数76.9kHz、11:55と23:55に時報を発したとある。POZ局の開設はもう少しさかのぼると思われる。
『理科年表』第2冊(1925年)では、POZ局は周波数16.6kHzと96.8kHzで0:00と12:00に時報を発した。コールサインがDFYに変更されたのは1930年である。「第7冊(1931)」からは16.6kHzのみとなった。「第12冊(1936)」になると、DFY(10440kHz、0:00)のほかに、DFW(23.0kHz、0:00/12:00)、DFP(7910kHz、0:00)、DGK(6680kHz、0:00)、DFC(12980kHz、12:00)、DFD(14650kHz、12:00)があらわれる。これらのうちDGK局とDFD局は「第14冊(1938)」から記述が消える。「第19冊(1943)」まで記述が残るのはDFY局とDFP局のみであった。『東京天文台 無線報時史』では、DFY局の受信が1945年まであり、1945年5月1日に「長波中止」の記述がみえる。
ドイツ報時局に時報情報を提供していたハンブルク天文台は1825年の創建で、1912年に現在の地Bergedorfに移転してきた。
図2 Hamburg天文台
図3 ドイツの地図Königs Wusterhausenはベルリン郊外、中心部から約30km南の地である。Nauenとはベルリンをはさんだ対角にある。この局は1929年に開設され、最初はコールサインの記述がなかった。DFWのコールサインは「第11冊(1935)」からで、「第12冊(1936)」ではNauenに組み込まれてしまった。DFW局は、周波数183.5kHz、12:00に時報を送出した。その後「第11冊(1935)」では送信時刻に0:00が加わり、「第12冊(1936)」からは周波数23.0kHzとなった。この局は「第14冊(1938)」以降に記述はみられない。
「Modern Wireless」には、この局がLPというコールサインで、57.1kHzを使用して6:35、6:50、8:40、8:50に報時信号を送信していたとある。一方、「Citizens Radio Callbook」では、この時間以外にも9:05、9:15、10:30、19:50、20:05に送信していたとある。「CR」では局の分類は「気象概況」となっている。
図4 Norddeich送信所Norddeichはオランダ国境に近いNorden市郊外の海辺の地で、北海リゾートの地として知られる。ハンブルクから西に約200kmにある。DAN局も1929年の開設で、周波数も同じ183.5kHz、0:00の報時であった。『理科年表』第9冊(1933)では周波数が短波11340kHzとなり、報時時刻に12:00が追加された。この局も「第14冊(1938)」以降に記述はない。DAN局については「無線報時史」に1933年9月～1934年12月の受信記録がある。また、1941年にはDFP局(7917kHz、0:06))が、1942年と43年にはDGZ局(14605kHz、12:06)の受信記録がNorddeichとして出ている。しかしこの2局は『理科年表』ではNauenとなっており、検討が必要である。
「Modern Wireless」には、上記の局意外にハノーファーにOUIという局があったとある。31.6kHzで19:00に信号を送出した。「Citizens Radio Callbook」では、地名がEilveseとなっている。ここはハノーファーの北西約30kmの地である。分類は「新聞」となっており、「大西洋航路船の新聞」という記載も見られた。また、20.8kHzでの送信という記述もあった。
【図の出典】
図1 Nauen送信所 Wikipedia(英語版)"Nauen Transmitter Station"
図2 Hamburg天文台 Wikipedia(英語版)"Hamburg Observatory"
図4 Norddeich送信所 http://www.pust-norden.de/dan_ww2_gb.htm