戦前のニュージーランドの報時局 2023.7.27 |
(a)Awanui River VLA(ZLA) |
図1 ニュージーランドの地図 VLA局は、ニュージーランド北島の北端にある。「1920年版」ではAwanui Riverという地名になっていた。これをキーワードに調べたところ、1913年12月に開設されたAwanui Coast Radio(ZLA)が浮かびあがった。ただし、コールサインは1927年まではVLAで、それ以降ZLAと変わる。この局については、「1922年版」まで記載がある。この局の送信周波数は記載がなく、報時は22:31、22:32、22:33、22:34、22:35に送出され、各信号は約1秒となっている。ウェリントンのHector天文台(1925年以降はDominion天文台と改称)に要求すれば、VLA局を通じて報時信号を得られるという記載もあった。 「第2冊(1925)」には、Awanuiという地名でVLA局の記載がある。周波数150kHzで10:00に報時を行った。報時の開始は1918年である。この局は「第4冊(1928)」まで記載されていた。 |
(b) Wellington VLW(ZLW) |
図2 ウエリントンの地図 VLW局はウェリントン市の西にあるTinakori Hill(現在はTe Ahumairangiという)にある。Dominion天文台が運用するVLY局と同じ局ではないかと思われたが、秒まで記した座標では明らかに異なるので、別扱いとした。「1922年版」では、報時信号は500kHzで、21:00から21:05まで各分の00秒に出す長符をもって報時信号とした。長符は約1分間連続するとある。この報時信号はHector天文台(1925年以降はDominion天文台と改称)の標準時計による自動装置で動作しているようだ。「1924年(上)版」には報時時刻11:00~11:05が追加された。「1927年版」には記載がなくなり、代わりにDominion天文台(VLY)があらわれる。 「第2冊(1925)」では、VLW局の開設は1920年、500kHzで9:00に信号を発したとある。次にあらわれるのは「第9冊(1933)」で、ZLWにコールサインが変わった。この局は「第13冊(1937)」まで記載があった。『理科年表』ではVLW(ZLW)とVLY(ZLY)は同じ局として扱われている。報時の時間は「第3冊(1926)」から9:00と23:00になった。 別の資料(*2)をみると、このVLW局は海岸局として1911年7月に開局したとある。2.5kWの火花放電式送信機が使われた。この局の開局後に、前述のZLA局(Awanui)が開局した。 (*2)"Radiocommunications History in New Zealand" https://www.rsm.govt.nz/assets/Uploads/documents/384b04ec58/radiocommunications-history-in-new-zealand.pdf |
(c)Dominion Observatory VLY(ZLY) |
図3 Dominion Observatory VLY局はドミニオン天文台が直接管轄していた局だと思われる。局の開設はVLW局と同じ1920年である。周波数500kHzで9:00~9:05と23:00~23:05に信号を発した。「1929年版」ではコールサインがZLOとなったが、その後ZLYに訂正されているので、ZLOは間違いだと思われる。 送信フォーマットを表2G-4に示す。送信は祝日を除く毎火曜・金曜に送信された。 ドミニオン天文台は、かつてはニュージーランドの科学者であるJames Hectorにちなんでへクター天文台と呼ばれていた。1907年の開設である。この天文台は天文観測によりニュージーランド標準時を決める役割を果たした。 表1 VLY局の送信フォーマット 【図の出典】 図3 Dominion Observatory https://www.doc.govt.nz/parks-and-recreation/places-to-go/wellington-kapiti/places/wellington-central-area/dominion-observatory/ 他は筆者作成 |
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