戦前のスペインの報時局     2023.5.28
 (a)Cádiz EBY(EBC)  

図1 Cádizの地図

 Cádizはジブラルタル海峡の北西80kmの地にある。ここはレオン島(Isla de León)という陸に近接した島で、海水浴場が林立する。局の経緯度とほぼ同じ位置に王立海軍天文台(Real Observatorio de la Armada)があり、ここから報時信号が出ていたのではないかと考える。時刻の情報を提供したのはサン・フェルナンド天文台(現Observatorio de la Armada)で1753年に創建され、1798年にレオン島に移転した。サン・フェルナンドとはカディス地方の町の名称である。

図2 Observatorio de la Armada

 EBY局は、「第5冊(1929)」から登場する。開局は1928年とある。周波数150kHzで13:00に報時を発した。「第7冊(1931)」では周波数が430kHzに変更になり、コールサインがEBCとなった。「第12冊(1936)」で再び150kHzに戻った。

 ところで、このカディスには「」というものがあった。大航海時代に世界中の海に繰り出したスペインでは、天文台の創設以来、作成された地図はすべてカディスの子午線を0°としたものであった。カディスの子午線は1884年にグリニッジ子午線が基準となるまで続いた。グリニッジとの差は6°17'15"(時間に換算すると25分9秒)である。
 
(b)Aranjuez EAA

 「Modern Wireless」によれば、スペインのマドリードの南約40kmの地にあるアランフェスにEAA局があった。EAA局は44.8kHzで8:00に信号を発した。アランフェスはアランフェス王宮(Palacio Real de Aranjuez)で有名な地である。「Citizens Radio Callbook」では、EAA局は「ドイツのナウエンPOZ局との通信」とある。



【図の出典】
図2 Observatorio de la Armada  https://www.flickr.com/photos/desdelacamara/14345177766

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