標準周波数時報局 WWV
<BACK>  update:2021/06/18
1.はじめに
 NIST(National Institute of Standards and Technology:国立標準技術研究所)の前身であるNBS(National Bureau of Standards:国立標準局)の科学者たちは、早くも1905年には無線周波数の伝播の研究を始めた。そして、WWV、WWVH、WWVBが運用されるようになった。ここでは、コロラド州フォートコリンズにあるWWVについて述べることとする。

2.WWVの歴史
 第一次世界大戦中、NBSは無線部門を創立し、防衛と航法のための無線技術を開発するために軍と一緒に仕事をした。無線局のコールサインWWVは1919年10月にNBSに割り当てられた。最初の放送は1920年5月に始まったが、放送内容はイブニングコンサートであった。当時WWVはワシントンD.C.にあった。波長600m、出力50Wの送信は、局から約40km離れたところで聞くことができたという。これらの初期の実験音楽放送は、すべての民間放送局に約6ヶ月先行した。最初の民間放送局として一般に知られているペンシルバニア州ピッツバーグのKDKAでも1920年11月2日までは放送が行われなかった。

 1920年12月15日、WWVは、農業事務所および農業の組織への市場ニュースの配信を1921年4月15日まで行った。2kWの火花送信機から電信符号を使って、毎日の市場マーケットグラムを750kHzで放送した。
 WWV局の目的が、他のラジオ放送局用の参照基準となる標準周波数信号の送信になることが決まったのは、1922年12月のことである。標準周波数局WWVの最初のテストは1923年1月29日から30日にかけて、200〜545kHzの周波数を包括して放送された。1923年3月まで、WWVは125〜2000kHzまでの周波数で、毎月あるいは毎週のスケージュールにしたがい放送された。送信周波数の精度は「1%の1/3より良い」と評された。局の出力電力はこの時1kWであった。
 WWVは、水晶発振器によって周波数用の信頼できる基準ゲージを必要としていたラジオ産業の要望を満たした。ラジオ局の数は増加していたので、電波利用の上から、各局がお互いにじゃまをしないように、全てのラジオ局には割り当て周波数通りに放送することが求められた。1928年に連邦無線委員会(Federal Radio Commission)は、各局に割り当て周波数の500Hz以内にとどまるよう求めていた。
 水晶発振器の技術や測定法の改良によって、1931年までにWWVの送信精度は10-3から10-6まで減少た。しかし、WWVの信号の大部分がミシシッピ川の西側エリアに到着しなかったことから、WWVは全アメリカをカバーする力がないという問題に直面した。この問題を解決するためにWWV以外の局にその役割を与えた。NBSは他の標準電波局をコントロールするよう援助した。スタンフォード大学のラジオ局6XBMは、1924年9月から1926年6月まで西海岸で標準周波数を送信した。また、ミネアポリス(ミネソタ州)のマサチューセッツ工科大学の局IXM及びゴールドメダル小麦会社(Gold Medal Flour Company)の局9XLがあった。

図1 『Radio Digest』1924年10月18日号の記事

 他の局が基準周波数として利用できるようになったため、WWVの打ち切りが1926年に発表された。しかし、多くの商用、政府及び個人のユーザーがWWV放送の継続と改善を求めて立ち上がった。廃止を免れたWWVは、過去の手動によるゼロビート技術ではなく、水晶発振器を使って直接送信機をコントロールするようになった。新しい方法は5MHz一波のみを使用することが決まった。
 5MHzの放送は、水晶発振器によって10-6の精度でコントロールされ、1931年1月から150Wの送信機でカレッジパーク(メリーランド州)で始まった。送信スケジュールは、しばらくの間は毎週火曜日の朝2時間と夜2時間送信であった。1年以内に出力は1kWに増加され、精度は10-6未満となった。

 WWV局の需要の拡大のためには新しい送信機とアンテナが必要となり、WWVは1932年12月にメリーランドのベルツビル(Beltsville)の近くの農務省の地に移った。1933年4月には、局は5MHz、30kWで放送しており、その後10MHz、15MHz(出力20kW)の放送が1935年に追加された。10MHz、15MHzの周波数は5MHzの倍数のために選ばれた。この頃、局の周波数は2×10-8以内にコントロールされた。1937年6月に、標準音(A440)、秒パルス、標準時間間隔および電離圏速報が放送に加えられた。15MHzは一時20MHzの送信と置き替えられたが、1940年5月には元に戻された。

 1940年11月6日、原因不明の火災が生じたが、設備は被災を免れた。1941年7月の議会で新局設置が決まり、以前の場所から5km南に建設され、1943年1月に放送が開始された。新しい局では、5MHzと10MHzの信号は終日、15MHzの信号は日中のみの放送となった。送信出力は、8〜10kWの間であった。1944年2月には2.5MHz、1kWの送信機からの夕方の放送が始まった。

図2 MarylandのWWVの建物と局員(1943.4)

 これまで周波数と時間間隔ために参照されてきたWWVだったが、まだ標準時間源としては使用されていなかった。これは1944年6月に変更され、アメリカ海軍観測所(USNO)のものにWWVの時報信号の同期を認可した。1945年10月、局は毎5分ごとに電信符号中に時刻アナウンス(東部標準時)を加えた。1946年12月には、20、25、30および35MHzの4つの新しい搬送周波数が加えられた。当時、局は7つの異なる周波数で終日放送されており、2.5MHzは午後9時から午前7時まで放送していた。

 時刻の音声アナウンスは、1950年1月1日に始まった。音声アナウンスは5分ごとに行われた。600および440Hzの標準音は毎分交互に放送された。
 30MHzと35MHzの放送は1953年1月に中止され、25MHzの放送は1977年に中止された。1977年と1978年の約2年の中断を除き、20MHzの放送は現在まで続いている。地球物理学の警告メッセージは1957年7月に始まった。また水晶発振器の技術の改善とともに、1958年までに、送信周波数のコントロールは、国家規格の2×10-10以内に維持された。

 1955年から1958年まで、WWVは原子秒の定義に重要な役割を果たした。この期間中に、アメリカワシントンの海軍天文台(USNO)と英国テディントンの国立物理学研究所(NPL)は、WWVから放送された信号を同時に測定した。USNOは信号を天文観測時(UT2)と比較した。また、NPLは信号をちょうど開発した新しいセシウム基準と比較した。彼らが集めたデータは、原子秒と天文秒の長さが同じであるとしたUSNOとNPLの主張に役立ち、後にセシウム原子の9,192,631,770周期を1秒の時間として定義する原子秒へと導いた。

 年、月、日および正確な時刻を含む実験のタイム・コードは、1960年4月に始まり、1961年1月に通常の放送の一部になった。NASA 36ビット・コードとして知られるこのタイム・コードは、1000Hzの変調を使用し、100Hzのパルス間隔で作られた。
 1Hzのパルス間隔と100Hzの変調の使用は、1971年7月1日に始められた。新しいコードは夏時間(DST)の信号を含み、電信のタイム・コードはこの日に永久に削除された。

 1966年にWWVは、コロラド・フォートコリンズの近くの現在地に移転した。WWVは390エーカー(158ヘクタール)の同じ土地を共有することになった。1966年12月1日00:00UTCに、メリーランド・グリーンベルトの局は停波し、同時にフォートコリンズの新しい局が放送を開始した。

 現在の場所は、時間と周波数の国家規格が維持されているボールダー研究所から約80km離れている。ボールダーに近いこと、送信所で原子発振器が使えることが、送信周波数の精度を2×10-11以内、つまり10ポイント精度を向上させた。現在、局の周波数は10-13のオーダー以内にコントロールされている。

 1967年4月に、WWVは現地時間の代わりにグリニッジ標準時(GMT)を放送し始めた。また、1974年1月には協定世界時(UTC)を使用する現在のフォーマットを始めた。時刻アナウンスは、1971年7月1日から、5分ごとに代わり、現在は毎分行なわれている。この日からディジタル・タイム・コードが現在のフォームに加えられた。局は1972年6月に、史上初の「閏秒」を放送した。

 1991年8月13日、WWVはディジタル化され、半導体メモリに記憶された録音音声を放送し始めた。ドン・エリオット・ヘルドは、時刻アナウンスが1950年に始まった時のWWVのオリジナルの音声だったが、このディジタル化を機に変えられた。

3.WWVの施設・設備
(1)WWV とWWVBの場所
 無線局WWVおよびWWVBは、2000年にコロラド州フォートコリンズの北およそ6マイル(9.7km)の地に移転した。そこはコロラド州ボールダーにあるNISTの研究所の北西50マイル(80km)に位置する。その設備は、約390エーカーのアメリカ政府土地(158ヘクタール)を占有している。

図3 所在地

図4 配置図

(2)WWVの建物

 WWVの送信機の建物は1966年に建設された鉄筋コンクリート造の平屋で、6880平方フィート(639u)ある。建物には事務所と光熱水エリアに加え、2つの遮蔽ルームと呼ばれる電気シールドされた場所がある。また、送信機にWWVの信号を供給するセシウム周波数標準およびタイム・コード発生器の場所がある。研究所のエリアは遮蔽ルームに隣接したところにある。
 送信機室は、三方を研究所/遮蔽ルームで取り囲まれた場所に位置している。残りの建物は、機械工場と緊急予備発電機のための場所である。
 発電機室には、停電の場合に自動的に作動する250kWの予備発電機がある。また、UPS(無停電電源装置)が設置されている。

図5 WWVの送信機室建物

図6 建物間取り

(3)WWVの送信機
 WWVに設置された最初の送信機は、1960年代中頃にTechnical Materiel株式会社(TMC)によって製造された。これらは軍事仕様の送信機であった。モデルGPT-40Kは10kWの出力で、5、10、15MHzの放送で使用された(それぞれT8、T7、T2と呼ばれた)。またモデルGPT-10Kは、2.5kWの出力で、2.5、20、25MHzの放送で使用された(T4、T5、T6と呼ばれた)。それぞれの周波数は、当時は専用の送信機とアンテナを持っており、さらにWWVのどの周波数でも運用できる広帯域アンテナに接続された2台の予備の送信機T1とT3を持っていた。1970年代中頃に、25MHzのサービスが運用停止となった時、T6と25MHzのアンテナは15MHzの放送用の予備の送信機とアンテナとして使用されるようになった。同時期に、主送信機の欠陥時に自動的に予備の送信機と入れ替えられるように組み込まれる設備が導入された。
 1990年に新送信機が、5、10、15MHzのために購入された。これらの新しい10kWの送信機はCCA株式会社によって作られ、T8-A、T7-A、T2-Aと呼ばれた。同時に、遠隔操作できるアンテナスイッチが、新しいCCA送信機と交換されたTMC設備の両方の出力に設置・接続された。古い送信機は、5MHzと10MHzのサービス用の予備送信機として使用されることになった。

図7 WWVの20MHz送信機

図8 WWVの15MHz送信機

(4)WWVのアンテナと送信線
 6本のWWVアンテナは、送信ビルの建物の北と東の棟頂に沿って設置されている。南への送信方角以外の地勢は、アンテナを取り巻くように下方へ傾斜している。この地勢の特徴は低放射角の信号をさらに強めるはたらきをする。放射パターンへの影響を最小にするために、送信ビルはアンテナより低い場所に位置している。
 WWVの主要なアンテナはRohn社によって製造され、局が建てられた時に設置された。これらは一辺18.5インチ(47cm)の3角柱タワーで構成され、コンクリートの基礎に固定された蝶番状の鋼の土台にマウントされ、少なくとも2本の支線が取り付けられている。
 主要なアンテナと15MHzの予備アンテナは、半波長、垂直偏向のダイポールである。送信線からの接続は、垂直マストの中心点に近い、地上から1/4波長の場所である。マストの底部は電気的にアースされる。トップの部分には3つのセラミック絶縁体がマウントされ、アンテナ上部の放射素子を構成する。下部の放射素子は、45°で地面へと傾斜する、9・1/4波長の銅メッキされた鋼線から成る。この「スカート」状のワイヤーの各々は、セラミックあるいは繊維ガラスの絶縁体で地面から絶縁されている。スカートは、さらにタワーの中間点で支線としての役割も果たしている。いくつかのWWVアンテナは、120本を撚りあわせた錫めっき銅線を、3°間隔で一定間隔に配置したグランドプレーンを持ち、それはマストの基礎から外へと放射状に伸び、各々は接地棒に接続されている。
 2つの広帯域モノポールアンテナが設置されている。一つは建物の北へ、一つは建物の南へ。これらモデル437C-2AアンテナはCollins Radio会社によって製造され、局が建設された時に設置された。それらは、高さ88フィート(27m)の中央のタワー・セクションとそれを支えるセラミックの基礎絶縁体、それを囲むワイヤ群から成る。グランドプレーンは36本の銅線から成り、タワーから放射状に伸びる。放射状の線は各々105フィート(32m)の長さで、銅で被覆されたアース棒につながる。それぞれの広帯域アンテナは専用の送信機に接続され、任意のWWVの放送周波数でも作動することができる。
 すべてのアンテナは、地上数インチの短いコンクリートポストに設置された固定した同軸ケーブルの送信線で送信機と繋がっている。5、10、15MHzの主要アンテナの線は、1本の広帯域の予備アンテナも同様に、3・1/8インチ(79mm)の直径である。また他のアンテナの線は1・5/8インチ(41mm)の直径である。

図9 WWVの15MHzアンテナ

図10 WWVの広帯域モノポールアンテナ

図11 WWVのアンテナへの送信線
カウアイ島


(5)WWVの時間と周波数に関する設備
 WWVの時間と周波数の設備は、温度管理されたメイン・スクリーン室に設置されている。システムの「心臓部」は、3つの既製のセシウム発振器である。3つのセシウム発振器のうちの1つは、局のマスタークロックとして使われている。けれども、それぞれの発振器は、他の分配設備やモニタリング設備と同様に、タイム・コード発生器(TCG)に接続されている。タイム・コード発生器は、WWV放送に音声やデータ情報のすべてを供給・挿入する。WWVの TCGは、Datachron社によって作られ、1991年に設置された。

図12 セシウム原子時計

(6)周波数と出力レベル
 WWVは、2.5MHz、5MHz、10MHz、15MHz、20MHzで連続的に放送している。通常の放射電力は、5、10、15MHzでは10kW、2.5、と20 MHzでは2.5kWである。主送信機やアンテナの修理・メンテナンスの期間に生じる予備状態での運用中は、すべての周波数で2.5kWとなる。


4.WWVの放送フォーマット
(1).計時システム
 WWVのスクリーンルームでは、3つの独立した時間と周波数の発生システムが運用されている。システムのうちの2つは、WWVの主送信機とWWVBに信号を提供するためで、他のシステムはWWVの予備送信機に供給される。 WWVの放送機器ラックのブロック図を示す。個々のシステムは、商用セシウム周波数標準(Commercial Cesium Frequency Standard)、周波数分割・分配増幅器(Frequency Divider/Distribution Amplifier)、時間コード発生器(TCG:Time Code Generator)、モニター用および補助出力(Monitoring and Ancillary Outputs)、機器ラック(Equipment Rack)から構成されている。それぞれのセシウム周波数標準は、分割・分配増幅器に供給される極めて安定した5MHzの周波数基準出力を作りだす。分割・分配増幅器は、信号を時間コード発生器(5MHzを1pps(pulse per second)へ分割する機器)と周波数計測分析システム(FMAS:Frequency Measurement and Analysis System)へ分配する。5MHzは1MHzにも分割され、スクリーンルームのコントローラに送られる。


図13 WWVの放送機器ラックのブロック図

(2)放送フォーマット

 WWVの放送フォーマットは、標準の搬送波周波数、標準の可聴周波数、時間間隔、音声による時刻アナウンス、2進化10進(BCD)による時間コードおよび公式のアナウンスから構成される。標準の搬送波周波数以外はすべて可聴周波数域にある。WWVとWWVHは、同一のBCD時間コードを放送する。キャリアおよびすべての音声はサイトマスター時計から得られる。WWVの5つの搬送周波数(2.5MHz、5MHz、10MHz、15MHz、20MHz)もまた標準周波数として供給される。すべての可聴周波数と音声はTCGsで生成される。それは、周波数標準として結合されたセシウム発振器を使用する。局の識別メッセージだけでなく時刻の音声アナウンスも、あらかじめ記録された男性的な声を使い、時間コード発生器から生ずる。

(a)音声時刻アナウンス
 WWVの音声時刻アナウンスには、男性の声が使われていて、毎分の約7秒前から始まる。0725UTCの音声時刻アナウンスの例を示す:
 At the tone: seven hours, twenty five minutes, coordinated universal time.
 このアナウンスには短い1000Hzのトーンが続く。時刻アナウンスは、各種のデジタル的に蓄えられたフレーズや発音された言葉から連結または組み立てられる。すべてのフレーズと言葉は人の音声を録音したものである。
 同じ男性の声を使っている局の識別メッセージは、毎時間の最初および中間点で放送される。局のIDは次の通りである:
 National Institute of Standards and Technology time: this is Radio Station WWV, Fort Collins Colorado, broadcasting on internationally allocated standard carrier frequencies of two-point-five, five, ten, fifteen, and twenty megahertz, providing time of day, standard time interval, and other related information. Inquiries regarding these transmissions may be directed to the National Institute of Standards and Technology, Radio Station WWV, 2000 East County Road 58, Fort Collins, Colorado, 80524.
 WWVの局のIDアナウンスは約35秒続き、毎時間の最初または中間点をマークする分のトーンの間に放送される。例えば、アナウンスは1100UTCと1130UTCに始まる。それは、時間コード発生器の電子メモリーに記憶されている。

(b) 標準の時間間隔
 WWVにおいて放送される標準の時間間隔は様々な長さのトーンにより示される。秒、10秒、分、時間、および日の間隔が、放送のすべてである。時間間隔は次の通り示される。
・秒:1000Hzトーンの短音でほとんどは長さ5msである。それは時計のチクタク音を真似ている。これらのパルスまたは「チクタク」音は、29番目と59番目が省略される。それぞれの分が始まるところの秒は、より長いトーンで示される。
・10秒:BCD時間コードで示される。
・分:毎時間の最初を除くすべての分は1000Hzトーンの800msの短音である。
・時間:すべての時間は1500Hzトーンの800msの短音である。また440Hzトーンは、WWVの2分目およびWWVHの1分目に、1日の最初の1時間を除いてそれぞれ1度放送される。
・日:これは正式な日の指標ではなく、上記に示された440Hzトーンが、1日の最初の1時間の間は除かれるということである。

(c) 標準の可聴周波数
 WWVは、搬送波の周波数に加えて、すべての時間の分の間に標準の可聴周波数も放送する。500Hzおよび600Hzのトーンは、分の交互に放送され、440Hzトーンは日の最初の1時間を除いて1時間ごとに1回放送される。トーンは、それらの割り当てられた分の最初の45秒の間、放送に挿入されるが、無音期間と時間を示す音声アナウンスがそれに続く。秒パルスはしばらくトーンを中断する。個々のパルスには10msの無音が先行し、パルスの後25msの無音が続く。
 トーン変調がない、より長い無音の期間が、毎時間に数分ある。しかし、搬送波の周波数、秒パルス、時間アナウンスおよびBCD時間コードは、これらの期間の間も続く。WWVの無音期間の目的は、WWVHの放送の音声アナウンスへの干渉を防止するためである。他局が音声メッセージを放送している間は、もう一方の局は通常音声の放送を行わない。WWVの無音期間は、43分〜52分と29分と59分にある。


図14 WWVの放送フォーマット

(d) 100Hz時刻コード
 WWVとWWVHは、100Hz副搬送波で同一の時刻コードを放送する。さらに、100Hzの周波数は基準の周波数として使用可能である。時刻コードは2進化10進法(BCD)の書式である。それは4ビットで1桁の10進数を表している。2進-10進の重みは1-2-4-8であらわされ、最下位の数字から最初に送信される。

 WWVとWWVHの時刻コードは、修正されたIRIG-Hコードであらわされる。IRIGコードとは、タイムコードの標準化の1つであり、そのコードにはA、B、D、E、G、Hの書式がある。WWV・WWVHではこのうちのH112という書式を使用している。
 標準のIRIG-Hの書式では、ビットは100Hzまたは1000Hzの搬送波で1pps(pulse per second)のレートで、振幅変調で送られる。2進の0は、増大あるいは「High」の変調が200mSの期間(100Hzのトーンを20サイクル分)のパルスから成り、2進の1は、500msの期間(100Hzのトーンを50サイクル分)のパルスから成る。位置を示すビットは800msの期間である。個々のパルスの先頭のポジティブエッジは、それぞれの秒のはじまりにある。振幅の高低比は、3.3:1である。
 WWV・WWVH放送では、秒クリック音が聞かれるように、100Hzのトーンが抑制されており、このためWWV・WWVH時刻コードでは、2進の0は170msの長さであり、2進の1は470msの長さとなっている。また、位置を示すマーカーは770msの期間である。個々のパルスの先頭のエッジは、その秒のはじめの30ms後にある。
 個々のWWV・WWVHの時刻コードフレームの送信には1分かかる。フレームには、その年の下2桁、1年の第何日目、時間と分、UT1訂正だけでなく、夏時間と標準時の情報、うるう秒表示、様々な識別や位置を示すマーカーのビットを含む。年(00〜99)、時間(00〜23)および分(00〜59)は、2桁のBCDを使って表現される。1年の第何日目(001〜366)は、3桁のBCDを必要とする。秒は、フレーム内のパルスを計数することによって決定できる。


図15 WWVのコードフォーマット

5.その他
(1)QSLカード


(1999.3受信)

(2)WWVの住所と電子メール:

   NIST Radio Stations WWV,
   2000 East Country Road 58,
   Fort Collins,CO 80524-9499

   WebPage: https://www.nist.gov/time-distribution/radio-station-wwv

   E-mail: nist.radio@boulder.nist.gov

【参考】
『NIST Time and Frequency Radio Stations: WWV,WWVH,and WWVB』G.K.Nelson, M.A.Lombardi, D.T.Okayama,
  NIST Special Publication 250-67, January 2005

【図版】
図1 『Radio Digest』1924年10月18日号
図2「Time Signal Stations」M.Lombardi, https://www.researchgate.net/publication/269527973 より
図6
「NBS Technical Note 611」1971.10 より
図12NISTのウェブページより
その他の図は参考書籍より引用

(OG)
 

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