電磁石モーター    2023.05.18

 50枚入のCDやDVDを購入すると、中に1枚だけ透明なディスクが入っている。何かに使おうとずっと取りためてきたが、いっこうに使い道が見つからない。円形なので回転させるのがよいが、ディスクの穴が大きいためにどうやって小さい穴にできるか悩んできた。考えた結果、板をはりつけて中心を見つけることで対応することにした。回転するものといえば、まずモーターである。電磁石を使ってモーターを作ってみた(図1参照)。

図1 回転している電磁石モーター

図2 全体図(正面図)

図3 全体図(側面図)

1.ディスクの中心を見つける

 ディスクは直径120mm、穴の直径は15mmである。この穴をM3のネジを通して回転できるようにしたい。
 まずはディスクの中心を求める。厚手の紙(私はケント紙を使った。画用紙などでもよい。上質紙では薄いのでシワがよったりする)に図4のように作図する。線分ABとACは垂直である。150mmくらいの長さに引く。角CABを二等分する。これをADとする。A点から120mmの点をABとACの線分上にとり、これを結ぶ。
 次にケント紙(画用紙)で20×80の紙を4枚作り、2枚づつ貼り合わせる。1枚では薄いので重ねた。ボール紙などの厚紙があれば、それを使えばよい。そのときは貼り合わせる必要はない。この紙をAB、ACの線上にはりつける。このはり付け方で円の中心の精度が決まる。

図4  ディスクの中心を求める

 ディスクをこの紙ではさむように置く。ディスクの中心を線分ADが通っているのが確認できる。細いペンなどでディスクに線を引いておく。次にディスクの線がABとACから引かれた線分に重なるようにディスクを置く。ペンでADに沿って線をディスク上に引く。これでディスクを90°に分割した線が引けた。

 円板押さえを作り、まず片側をディスクにはりつける。接着が固定したらディスク上の線分を延長し、円板押さえ上に線を引き、中心を求める。その後、反対側の円板押さえをはり付ける。接着が固定したら、φ3.2のドリルで穴開けをする。

 ディスク上の線分の円周上から測って8mmのところに印を書く。ここに磁石をはり付ける。磁石は直径6mm、厚さ1mmのエオジム磁石を使用した。ディスクの両面にはるので8個必要になる。磁石は片面はすべてがN極になるように、もう片面がすべてS極になるようにはりつける。この極性を間違えると回転しなくなる。
間違えずにはる方法は、すべての磁石をとりだしてくっつけておくと、必ずNS-NS-NSという順に並ぶ。その面にペンで印をつけておけば間違えない。また、必ず片面を接着し固定したあとで、反対面に磁石の吸い付く面のとおりに取り付ければ、間違えない。接着にはコニシの「ボンドG17」を使用した。


2.電磁石を作る
 電磁石の鉄心にはM5×50のボルトを使用した。ときどき鉄材ではないボルトがあるので、磁石に吸い付くかどうか確認してから購入するとよい。M5のナットとスプリングワッシャーも必要である。電磁石は2個作る。外径9mm(内径5mm)の樹脂製パイプに巻き枠となるアクリル板を加工して接着する。ボルト・ナットで固定し、巻き始める.図5のように巻き枠の小穴にボビン側からエナメル線を100mmほど通し、ぐるっと回して、同じ穴に入れて出しておく。線が出たままだと巻きにくいのでボルトに巻いておく。巻き方はどちら向きに巻いてもよいが、2つとも同じ向きに巻くようにすること。エナメル線は0.5mm径のものを使用した。巻いていき、端までいったら巻き線の上を重ねるように巻く。巻き数が多い方が磁力は強くなるので、がんばって巻くとよい。私は4重に巻いた(約300巻)。丁寧に巻いた方が体積が小さくなりたくさん巻くことができるが、丁寧でないからといって磁力が落ちるわけではない。巻き終わったら、再び巻き枠のもう一つの小穴に線を同じように通して、巻いた線がほどけないようにしておく。巻きはじめの小穴の横に印を付けておくとよい。

図5 巻き始め 図6 巻き終わり

3,軸受け部の製作

 回転するディスクの軸受けの部分を製作する。私は2mm厚のアクリル板を使用した。土台との取り付け部は軸受けとは別に作成したが、軸受け部に土台に取り付ける板を直接接着してもよい。L型アングルの土台に取り付ける部分の奥行きの寸法が抜けている。14mmである。10~20mmの間で決めればよい。

 
図7 軸受け部

 軸受け部ができたら、ディスクを取り付けてみよう。軸の間にはさむものの寸法により変わってくるので、左右の軸受けの間隔をどうするかは自分で決めること。私は模型のギアモータの付属品のスペーサーを使ったので、間隔は16mmとした。M3×40のなべ小ネジを使い。以下のような順番に間に入れた。
左軸受け部~スペーサー~ナット~平ワッシャー~ディスク部~平ワッシャー~ナット~スペーサー~右軸受け部~平ワッシャ~ナット~ナット
 ディスク部をはさむナットはしっかりディスク部を締め付けるようにする。右軸受け部の2つのナットはダブルナットで、最後に2つのナットを逆向きに締めつけてはずれないようにするためのものである。

4.電磁石取り付け台の製作
 電磁石を取り付ける台は、L型アングルにした。寸法は図8の通りである。2枚の板を加工し、アクリル用接着剤で接着した。製作自体は簡単であるが、ここでの一番のポイントは、土台への取り付け位置である。ディスクに近づけすぎると磁石と電磁石の鉄心がくっついてしまう。くっつかない程度の間隔を保ってできるだけ近くなるように取り付ける。間隔が大きくなればなるほど磁力は弱くなってしまう。

図8 電磁石取り付け台

図9 電磁石を取り付けた様子

5.スイッチ取り付け台の製作

 モーターは必要な期間だけ電流が流れ、電磁石としてはたらくようにしなければならない。今回はリードスイッチを使用した。リードスイッチ(Reed Switch)はガラスに封入されたスイッチ部が磁界内に入るとスイッチがONするという磁気を感じてはたらくスイッチである。この電磁石モーターにはディスク部に磁石を取り付けてあるので、これを感知して動作するように考えた。動作する位置は製作後に微調整が必要なため、スイッチ部がある程度自由に動くようにした。リードスイッチは図9右側の板に接着剤で取り付けた。取り付けるときは、磁石面とスイッチの平らな面が平行になるように取り付ける。

図10 スイッチ取り付け部

図11 スイッチを取り付けた様子

6.組み立て

 土台には150×100のアクリル板を使用した。軸受け部や電磁石取り付け台、スイッチ取り付け台の位置は各自で決めること。電磁石とスイッチ、電池の配線は図12を参照のこと。磁石と電磁石の極性がたいへん重要なので、これを間違えないように配線する。
 磁石にはN・Sの極性は書かれていないが、方位磁石があればすぐにわかる。

図12 配線図


7.調整

 このモーターはディスクに取り付けた磁石と電磁石の反発力を利用して回転力を作るものである。したがって、よいタイミングの時に電磁石として働かせるためには、スイッチの場所を調整する必要がある。電磁石部にディスクの磁石が近づいて、電磁石部を通過した瞬間に反発力が起これば、そこで回転力が起こる。その場所をさがすために、ディスクを手で回転させながら、スイッチの位置を移動させていく。ちょうどよい場所にくれば、ディスクは回転を続ける。

【使用磁石】藤原産業(株) 超強力ネオジウム磁石8個入り EMT-0608NM
【リードスイッチ】たとえば、秋月電子https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-03676/

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