「はらぺこあおむし」のからくり    2023.05.11

 カムをたくさん並べ、少しずつ位相をずらしてやると、波のうねりのような動きをします。これをみて、孫が見ていた絵本『はらぺこあおむし』(エリック・カール)が浮かび、これをからくりにしてみようと思いました。

 このおもちゃは、9枚のカムを少しずつずらして取り付け、波のうねりのような動きをさせます。これによって9つに分けた胴体部分が上下する仕組みです。
 全体の写真と図面を以下に示します。

図1 完成写真

図2 全体図

 材料は、軸受板には、厚さ20mmのパインの集成材を使いました。カムとハンドルには樫を使っています。あおむしの本体や側板、底板はアガチス材です。カムと接する球は、東急ハンズで「木のつまみ」というφ8、10個入のものを購入し、軸を切断して使いました。あおむしを支える軸はφ3の竹ひご、カムを通す棒はφ5の木製棒です。

1.加工
(1)あおむしの本体をつくる

 あおむしの本体は、10mmの円柱です。寸法を図3に示します。板を四角く切り、角を落としてから、ヤスリで形を整えます。本体には緑色のペイントを塗るので、そのままだと厚くなり、うまく並びません。9mm厚をメドにヤスリ等でうすくしておきます。

図3  あおむしの本体

 円柱が完成したら、図4のように円柱の側面部分の中央に穴をあけます。φ3の軸を取り付ける穴です。

図4 本体に穴をあける

(2)球の加工

 購入した球には軸がついているので、これを切り落とします。切り落とした部分に穴をあけます。これを9個作ります。深さを読み取れるボール盤を使用すれば3mmの深さの調節は容易ですが、私の持っているミニボール盤は、深さの目盛りが動いてしまうので使い物になりません。それでドリル本体にビニールテープを巻いて深さの目安としました。

図5 球の加工

(3)軸受板の加工

 軸受板は、あおむしと球をつないだ軸を上下させる部分です。図6に加工図を示します。私は台形にしましたが、長方形のままでも機能的には何の問題もありません。軸がφ3なので、最初はφ3.3のドリルで穴あけをしましたが、軸の寸法が正確にφ3ではなく、結局φ3.5のドリルを使いました。これでも一部の軸は太い部分があり、若干細く削ることもありました。

図6 軸受板の加工

(4)カムを作る

 カムはすべて同じ寸法です。加工図を図7に示します。カムの動きが正弦波(サインカーブ)になるように作図してみましたが、ほとんど円と同じなので、結局円にして中心から5mm偏心させることにしました。これを9枚作ります。私は東急ハンズで販売されている「木のはがき」(厚さ5mm)を使いました。加工の方法はあおむしの本体の加工法と同じです。ひたすら円になるようにやすりで整えます。あなはφ5のドリルであけます。軸がφ5なのできちきちに入り、接着剤等は不要だと考えていましたが、軸の太さはけっこういいかげんで、緩い部分が出てきてしまいました。この場合はボンド等で固定します。
 軸の部分に線を引き、カムを取り付ける位置を決めておきます。カムの方には長手方向に線を引いて、取り付ける際の傾きをこの線をみて調整します。私はおよそ30°ずつずれるようにカムを取り付けました。

図7 カムを作る


図8 カムの軸の寸法

(5)側板の加工

 側板は厚さ10mmのアガチス材を使いました。上の形状を細くしていますが、しなくてもかまいません。軸受板の形状に合わせて加工します。軸を通す穴はφ5.2のドリルを使いました。回転が固いようなら、ヤスリ等で少しだけ穴を広げます。これを2枚作ります。

図9 側板の加工

(6)底板の加工

 底板も厚さ10mmのアガチス材を使いました。裏から側板を木ねじで止めるので、出っ張りがないように、φ5のドリルでさらっておきます。木ねじは2×20を使いましたので、底板には2mmの下穴をあけておきました。

図10 底板の加工

(7)あおむしの頭を作る
 
あおむし本体と同じ材料でφ15の円柱を作り、ドーム型に丸めます。これもヤスリで成形します。

2.塗装
 
あおむし本体と頭のみ塗装しました。本体については、緑色で塗り、背中にあたる部分に黄色の線を入れました。頭は赤色です。先頭の胴体部分と頭は塗りおえてから接着するので、接着する部分は塗装しないようにします。本体の塗装は、軸を入れてからの方が作業がやりやすいです。円柱の平らな面は1度塗り、丸い側面は2度塗りしました。軸の部分に塗料が付かないようにテープ等で保護してから塗ります。頭はドーム部分のみ塗装し、2度塗りし、乾いた後に目の部分を白色で塗り、乾いたら目玉を油性ペンで書き入れました。
 
塗料は、私は安全を考えて水性の「Old Village Buttermilk Paint」(http://vividvan.co.jp)というものを使っています。一応自然材料のものなので、子どもの使うおもちゃにはよいかなと思い使用しています。色は他の塗料にはかなわないと思いますが、くすんだような色合いが気に入っています。

3.組み立て
(1)カムを軸に通す
 カムをφ5の軸に通します。固い場合は木づちなどで叩きながら、少しずつ入れていきます。ゆるい場合はボンド等で接着します。指定の位置に入れ、位相がずれていくようにカムにつけた目印の線をみながらずらしていきます。私はおよそ30°ずつずらしていきました。

(2)軸受板と側板の1つを接着する
 軸受板と側板の片側を接着します(
両方を接着してはいけません)。私は速乾性の木工用ボンドを使用しました。ほぼ10分ほどすると固定するので、作業を継続して行うことができます。

(3)あおむし本体と軸・球を軸受板に入れる
 あおむし本体に球を差し込むのですが、軸受板の穴を通してから球を差し込みます。差し込んだら動きがスムーズかどうか確認して下さい。次にカムが取り付けられた軸を入れます。入れてからもう一つの側板と軸受板を接着します。一度接着すると、カムははずすのが難しくなるので気をつけて下さい(カムの固定に接着剤を使っていなければなんとかはずすことは可能です)。

(4)ピンとハンドルをつける
 カムのついた軸の一方に穴をあけてあります。ここにピンをとりつけます。私はヨウジを使い、それぞれ2mmほど残してカットしました。ハンドルはきつめならば接着せずに装着します。まわす軸はφ5の丸棒を15mmに切りとりつけました。できたら動きを確認できます。

(5)底板を取り付ける
 動きを確認したら、底板を取り付けます。木ねじは、私は頭がφ3.5と小さいものを使いました。太さ2mm、長さ20mmのものです。たぶん長さ20mmの通常の木ねじでは太くなるので、木が割れる恐れがあります。細めのネジまたはクギの使用がおすすめです。また、側板にも下穴をあけておくと割れにくくなります。

 以上で作業は終了です。子どもが使うおもちゃですから、角をとり、しっかりヤスリをかけておきましょう。

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