マイコンESP32で電波時計の時刻合わせ~JJYシミュレータ    2023.01.23

1.はじめに
 我が家はマンションのためJJYの電波が入りにくい。窓際に電波時計を置けばかろうじてJJYを受信できるが、居間やトイレにおいた電波時計はまったく受信できず、そこの時計の時刻はどんどんずれていく。誤差が相当大きくなると、時計を窓際まで持ってきて一日放置しておけば正しい時刻を示すようになる。これがけっこうめんどくさい。

図1 回路の実験をしているところ

 さて、ESP32というマイコンの勉強をはじめたことをきっかけに、いろいろなマイコンを使った製作記事をネットでさがすようになった。ESP32というマイコンは、中国上海のEspressif Systems(中国名:乐鑫信息科技股份有限公司)が開発し、台湾積体電路製造(TSMC)で製造されているものである。Arduinoというかなりポピュラーなマイコンの開発環境がそのまま利用でき、かつハードウェア的にはArduinoをはるかに超えた機能を持つ。WifiとBluetoothを標準搭載し、12ビットのADコンバータや8ビットのDAコンバータを持つ。CPUはTensilica製のXtensaデュアルコア32ビットマイクロプロセッサで、クロックは160/240 MHzである。こんな高性能なマイコンが驚くような価格で購入できる。私が購入したのはESP32-DevKitCという機種だが、Amazonで1250円であった。

2.JJY時刻合わせシミュレータ
 マイコンESP32の製作記事をネットで探していたところ、電波時計の時刻合わせを行う製作記事に出会った。JJYの電波を管轄しているNICT(情報通信研究機構)のNTPサーバーのデータを使って、JJYもどきの信号を作り、電波時計を校正するというものである。NTPサーバーはNICTの他に、国立天文台水沢観測センター(https://gpsntp.miz.nao.ac.jp)、文部科学省高エネルギー加速器研究機構(https://gps.kek.jp)など、国内には30ほどのNTPサーバーがある。もちろん私たちが使っているパソコンは、これらのうちのどれかのNTPサーバーにつながっているので、パソコンの時刻はとても正確に表示される。

図2 JJYの送信信号のフォーマット

 NTPサーバーからは、年月日、時刻のデータ(例えば、"2022/12/31 15:28:00"のような)を得ることができる。これをJJYの発する信号の型式(図2)に変換してやり、微弱な電波として放出するのである。マイコンにはWifiが搭載されているので、パソコンと接続していなくても時刻合わせをすることが可能である。マイコンのプログラムについては参考のサイトのものをそのまま活用させていただいた。感謝!!
図3 ブロック図

 作成した疑似JJY信号を電波にする回路が必要になるが、参考のサイトではマイコンに直接抵抗やコンデンサ、コイルをつないでいた。ちょっとこれではマイコンが壊れてしまう危険性がある。パルス波で出力される信号を正弦波にするためには共振回路を使えばよい。そこでトランジスタを使ってスイッチング回路を構成し、並列共振回路を負荷としてみた。Lは4.7mHのマイクロインダクタで、これで40kHzに共振するコンデンサを計算すると、約3300pFであった。しかし出力は正弦波とならず、下半分がクリップされてしまった。そこで一般的な増幅回路に共振回路をつけてみたところ、比較的きれいな正弦波となった(図4)。無入力時のコレクタ電流は約1mA、パルス入力があると、0.2~1mAの間を脈動する。出力の正弦波の電圧は約1Vp-p(実効値で約0.35V)、周波数は40kHzジャストであった。
電源をパソコンのUSBからとる場合は図のダイオードからの回路は不要だが、パソコンをつながずに動作させたい場合は、乾電池4本で6Vが扱いやすい電圧となる。しかしこれでは電圧が高すぎるため、ダイオードを1本直列に入れることで、ESP32への電圧は5.2Vとなった。

図4 製作した回路

図5 パルスが入力されているときの出力波形

3.使ってみて

 30cmほどのリード線をコレクタに接続し、電波時計に近づけた。強制受信ボタンを押すと、2分ほどでデータ受信が終了し、正しい時刻を表示した。マイコンをユニバーサル基板ICB-93S-2に組んだものが図7である。マイコンとのピン接続は、「分割ロングピンソケット(42P」(図6))を1つづつ切り離して使用した。参考に実体配線図を図8につけておく。

図6  分割ロングピンソケット

 外部電源からESP32に電源を供給したついでに、どのくらいの電流が流れるか測定してみた。なんと約75mAの電流が流れている。先のトランジスタの消費電流は1mAほどだから、おおかたはESP32で消費される。Wifiを使うと消費電流が大きいという記事を読んだことがあったが、実際の数字をみるとそれがよくわかる。したがってこのJJYシミュレータは時計を校正するときだけ使い、ずっと時計のそばで動かしておこうなどと考えない方がよい。電池はすぐになくなる。

図7  ユニバーサル基板に組んでみた

図8  実体配線図
【参考】

https://gan0803.dev/blog/2021-03-10-jjy-simulator/
髙木誠利「JJY長波標準電波の活用」『HAM Journal』NO.104、2002年冬号、CQ出版社


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