常磐炭田の産業遺産   update:2019/08/11

 本州最大の炭田である常磐炭田は、「常陸(ひたち)」と「磐城(いわき)」にまたがっていることから「常磐」と呼ばれた。京浜工業地帯に近いという利点もあり、最盛期には400万t(1957年)を超える出炭量を誇った。1883年に磐城炭礦(株)が設立され、次いで1893年に白水炭礦(株)が設立される。この2社が1944年に合併し常磐炭礦(株)となった。採掘は1985年まで続いた。

 常磐炭田の遺跡は大きく3つに分かれる。一つはJR内郷駅一帯に広がる「内郷・好間地区」、二つ目はJR湯本駅周辺の常磐炭田の中心地である「湯本地区」、最後は北茨城市にある「勿来(なこそ)・北茨城地区」である。今回は、前2者を訪ねた。

 常磐炭田の産業遺産は、経産省が2007年に「京浜工業地帯の重工業化と地域の経済発展を支えた常磐地域の鉱工業の歩みを物語る近代化遺産群」という名称で指定されている。しかし、今回地図に示されている場所を中心に訪れたが、管理・整備されているとは思えないものもあり、草が生い茂りとても先に進めないところもあったのは残念である。

<内郷・好間地域>

好間炭礦専用鉄道橋梁

 石炭を常磐線綴駅(現内郷駅)に運搬するための好間炭礦専用鉄道の橋梁で、1907(明治40)年建造である。鉄道線はすでになく、この橋梁のみが残る。場所は国道49号と好間川が交差する南側にある。対岸には古河電子いわき工場があるが、この横に好間汽力発電所(1917年竣工)がある。白く塗られた建物の前には電力線の貫通口が見える。この発電所は炭鉱の排水、換気、巻揚用の電力を供給していたという。

好間汽力発電所

近くにある好間川にかかる吊り橋

古河好間炭礦専用線隧道

 
綴駅(現内郷駅)を出た鉄道の遺跡として残るものは、小川にかかる御台境開渠鉄橋跡である。煉瓦造りの橋台が道の横に残る。このあたりから長く続く盛り土帯が残り、第一鬼越隧道へ続く。この隧道は全長80m、煉瓦造りのみごとな隧道である。整備がされていないのが残念である。

 盛り土と橋台

常磐炭礦内郷水中貯炭場

常磐炭礦内郷選炭場

常磐炭礦内郷選炭工場建物

 
地区の建造物は、常磐炭礦が戦後大規模機械化を進めた施設で、水中貯炭場は1952年竣工、選炭場は1952年の竣工である。この他に、煉瓦造りの坑道通風機設置上屋(1917(大正6)年建造)があるが、道路からは見ることができない。これの施設は常磐興産(株)が管理しており、見学には許可が必要である。

<湯本地区>


いわき市石炭・化石館

 JR湯本駅の北側には、いわき市石炭・化石館「ほるる」がある。いわき市は常磐炭田とともに化石でも著名である。1968年、高校生が発見したフタバスズキリュウ(首長竜)の展示や世界の恐竜化石が展示されている。小さい館ではあるがりっぱな展示であり、化石に実際に触れることができる。また常磐炭田の様子が疑似坑道で体験できる。

フタバスズキリュウ

恐竜骨格の展示

初期の採掘の様子

坑道の支えの変遷

救助隊

 
坑夫の像

西部鉱竪坑櫓

 常磐炭礦(株)は、炭鉱の集約を行い、1965年に西部鉱竪坑を開設した。この竪坑櫓が閉山後、石炭・化石館に移設された。また、西部地区の磐崎鉱の石炭積込場が梅ヶ平に残る。

 
石炭積込場



■交通: JR常磐線「内郷」駅、「湯本」駅の周辺 詳しい地図は このwebページ を見よ

      (自家用車がないと、見学は難しい。タクシーを活用する以外にない。)


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