ソウル市内の近代建築物   update:2018/03/16

 1905年11月、日本は武力を背景に朝鮮に第2次日韓協約を締結を強要し、これに基づきソウルに朝鮮総督府が置かれ、内政・外交の実権をにぎることとなる。こうした植民地的支配は1945年8月まで続く。このためソウル市内をはじめ朝鮮国内には植民地時代の建物が数多く残る。特に、徳寿宮の周辺には近代建築が多く建つが、これは元々の徳寿宮の土地であったところが欧米列強の領事館や公使館の用地として切り取られたためではないかといわれている。

地図1

大韓帝国歴史館(石造殿)
 ソウル市内の徳寿宮の周囲には多くの近代建築物がある。まずは、徳寿宮内にある大韓帝国歴史館から見ていこう。徳寿宮は入場料1,000ウォン(65歳以上は無料)で、日本語のパンフレットもある。石造殿は英国人ハーディングの設計で、1910年に竣工した皇帝のための建物である。2009年から復元工事が始まり、2014年に大韓帝国歴史館として開館した。

 

石造殿の前にあった日時計(1434年製)

光明門にある水時計(昌慶宮自撃漏、国宝第229号)


貞洞第一教会
 貞洞第一教会は、朝鮮最初のメソジスト教会で、吉澤友太郎の設計で、1898年に竣工した。
貞洞第一教会


新亜日報社別館
 
この建物には4カ国語(韓・英・中・日)の解説があった。以下にそれを記述する。
「登録番号:登録文化財第402号
 1930年代には、この建物はアメリカのミシン製造会社シンガーの社屋として使われた。鉄筋コンクリート構造に赤煉瓦が積み上げられている。1階の中央入口の突出部や階段、バルコニーからは、建設当初のこの建物が貞洞の街とどのように調和していたか、その雰囲気に思いをはせることができる。内部の柱や床の構造、壁の暖炉などが原型のまま残っている。」

 地下監獄



梨花女子高校シンプソン館

 


旧ロシア公使館塔
 1890年に、ロシア人建築家サバティンの設計で竣工。朝鮮戦争時に破壊され、現在は塔部のみが残る。貞洞公園内に建つ。
 


培材学堂歴史博物館
 アメリカ人宣教師アペンゼラーが設立。この東館は1916年に竣工。




ソウル市立美術館(旧高等法院・京城地方法院)
 現在、ソウル市立美術館として使われている建物は、かつての高等法院・京城地方法院の建物の正面部分が保存されたものである。朝鮮総督府技師の岩井長三郎と笹慶一により設計され、1928年に竣工した。

 


救世軍中央会館・本営

 救世軍の韓国初の教会は1908年11月に建設された。写真右の「救世軍営」の扁額は1915年に造られた中央会館のものである。救世軍本営は、1926年に建てられたもので、士官養成、宣教、社会事業本部として使用するために建設された。

 

救世軍本営


聖公会ソウル聖堂
 イギリスの国教である聖公会の聖堂である。英国人ディクソンの設計により1926年に竣工した。

 


旧ソウル市庁舎
 朝鮮総督府建築課の岩井長三郎により設計され、1926年に竣工した。




 続いて、明洞付近の近代建築物について紹介する。
地図2

廣通橋
 近代建築とは少々異なるが、この廣通橋に使われている石材は、元貞陵(朝鮮王朝初代国王の第2夫人の墓)に使われていた十二神将の石像が使われているのである。橋の下を見ること。

 

 


廣通館
 廣通館(帝業銀行鐘路支店)は、佐藤熊太郎の設計により、1909年に竣工した。現在は、ウリ銀行鐘路支店として使われている。



明洞芸術劇場
 明洞芸術劇場は、1936年に明治座劇場として竣工した。設計は玉田建築事務所。




明洞教会(カトリック明洞大聖堂)
 明洞教会は、韓国最初の教区聖堂で、1898年5月に竣工した。日本語パンフレットあり。




韓国銀行・貨幣金融博物館
 貨幣金融博物館の建物は、辰野金吾が設計し、1912年に竣工した。元朝鮮銀行本店の建物である。

  


新世界百貨店
 新世界百貨店は、1930年に三越百貨店京城支店として竣工した。




旧・朝鮮貯蓄銀行(第一銀行第一支店)
 旧朝鮮貯蓄銀行は、1935年に竣工した。





 地図からはずれた場所にある建築物を以下に掲げておく。

東亜日報社屋
 東亜日報社屋は、1926年、韓国人建築家の朴東鎮により設計され、竣工した。現在は、一民美術館として使われている。場所は、光化門広場の交差点の東南側である。




ソウル駅舎
 旧・ソウル駅舎は、現在のソウル駅舎の東側の北側にある。塚本靖の設計で、1925年に竣工した。

 


ソウル医科大学博物館
 ソウル医科大学博物館は、1908年に大韓医院として竣工した。1926年に京城帝国大学病院となり、現在はソウル医科大学の博物館となっている。場所は昌慶宮の東側にあるソウル医科大学内にある。

 


【参考】
 砂本文彦『図説 ソウルの歴史~漢城・京城・ソウル 都市の建築の六○○年』河出書房新社、2009.11


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