明治村 機械館        2022.11.29

 明治村の一角に、「鉄道寮新橋工場」の建物があり、ここには明治期の機械が収蔵され、「機械館」と呼ばれている。機械館は明治100年記念事業の一環として構想され、1969年にオープンした。館内には、全国各地から蒐集した明治期の貴重な機械が展示されている。

鉄道寮新橋工場(1868年)

 新橋工場は、明治5年に開業した新橋停車場構内に作られた。建築材料等はイギリスから輸入されたもので、下記の柱の写真には「HAMILTON'S WINDSOR IRON WORKS LIMITED LIVERPOOL」の文字が見える。

工場の鉄柱(写真は横に回転させている)


紡毛ミュール精紡機(Woolen Mule Spinning Frame):1909年製造

 1896(明治29)年に創設された日本毛織株式会社(兵庫県加古川市)で使われていた。操作台のところには製造所であるドイツのHARTMANNの銘が見える。

 


打綿機(Scutcher & Lap Machine for GARABO):1912年頃製造

 綿の固まりをほぐし、ほこりや短い繊維を取り除き、延ばして平らにする機械。打綿機で平らにしたものを筒状にしてガラ紡機の筒に入れた。




ガラ紡機(GARABO Spinning Machine)

 写真左は水力使用(製造年不明)のもの。右は手動(1868年頃製造)のもの。
 ガラ紡機は、筒に入れた綿から繊維を引き出しねじりながら長い糸を作る機械。動かすと筒が回転しガラガラと音がすることからこの名称がつけられた。臥雲辰致により発明された日本独自の機械である。


 


玉締機(Bundling Machine):1904年製造

 精紡機で作られた糸を一定の長さで巻き取ったもの(「綛」(かせ)という)を10ポンドずつまとめて圧縮する機械。
 この機械は木本鉄工所(大阪)が製造し、遠州レース(株)(浜松市)で使用されていたもの。





荒打打綿機(Breaker Scutcher):1902年製造

 綿のかたまりをほぐし、ゴミや短い繊維を取り除き、のばして平らな状態にする機械。紡績の最初の工程のひとつ。製造はイギリスのPlatt Bros & Co Ltd。

 


仕上げ打綿機(Finishing Scutcher):1918年製造

 荒打ち打綿機によって作られたシート状の綿をさらにほぐし、むらのない状態にする機械。

 


梳綿機(Carding Machine):1896年製造

 打綿機でときほぐした綿をシート状にし、1本ずつの繊維に分け繊維の方向をそろえて束ね、ひも状にする機械。PLATT BROS & CO LIMITED OLDHAM の文字が見える。

 


練条機(Drawing Frame):1907年製造

 梳綿機で作られたひも状の綿を数本ずつ集めて引き延ばし、繊維を平行にして太さを均一にする機械。荒・中・仕上げと同じ工程を3回繰り返す。プラット社(英国)製。




粗紡機(Roving Frame):1896年製造

 練条機で作られた綿の束を引き延ばしてよりをかけ糸を作り巻き取る機械。




リング精紡機(Ring Spinning Frame):1893年製造

 粗紡機で作られた粗糸を引き延ばし、さらに強くねじり合わせて強い糸を作り巻き取る機械。これで綿糸が完成する。この機械は三重紡績(株)で使用されていた、現存最古のリング紡績機である。

 


津田式羽二重織機(Tsuda HABURTAE Power Loom):1907年製造

 石川県の津田米次郎が1900年に発明した。高級絹織物である羽二重を織る機械。羽二重の大量生産が可能になり、絹織物は明治後期の日本の主要輸出品の一つとなった。




フルファッション靴下編機(Full-fashioned Socks Knitting Machine):製造年不明

 女性用靴下(ストッキング)を織る機械。製造はドイツのKarl Liebknecht社。グンゼ塚口工場で使用されていたもの。




蒸気槌(Steam Hammer):1881年製造

 蒸気の圧力で3.37tのハンマーを持ち上げ落下の圧力で、鍛造や成型を行う機械。国鉄鷹取工場で使用されていた。製造はイギリスのThwaites & Carbutt Vulcan Iron Works。




木工旋盤(Wood Processing Lathe):1903年製造

 木材を加工する旋盤。動力はベルトで供給された。製造は日本車輌製造(株)で自前の製造である。

 


ボール盤(Drilling Machine):1885年製造

 ドリルを回転し材料に穴をあける機械。製造者は不明。国鉄鷹取工場(神戸市)で使用されていた。




研削盤(Grinding Machine):製造年不明

 高速回転する砥石に材料を押し当てて、表面を削る機械。国鉄小倉工場(北九州市)で使用されていた。




旋盤(Lathe):1898年製造

 ベッド面が山型のアメリカ式旋盤で、製造はアメリカのAmerican Tool Works である。国鉄鹿児島鉄道管理局都城保線区で使用されていた。




旋盤(Lathe):1897年製造

 ベルトを使って回転力を伝えていた。製造はイギリスのSelig Sonnenthal & CO. である。国鉄釧路鉄道管理局池田機関区で使用されていた。




足踏み旋盤(Treadle Lathe):1875年頃製造

 国産初期の足踏み旋盤で、山形県出身の伊藤嘉平治によって製造された。伊藤は上京して田中久重に学び、帰郷後にこの機械を製造した。1942年に伊藤家から東京工業大学に寄贈された。




菊花御紋章付平削盤(Planar with the Imperial Crest of the Chrysanthemum):1879年製造

 金属材料の平面を削る機械。製造は工部省赤羽工作分局で、現存はこれ1台のみ。この機械は盛岡市の船舶修理所使われ、のち岩手実業学校の実習用に転用された。

 


往復空気圧縮機(Reciprocating Air Compressor):1900年製造

 モーターによってピストンを往復させ空気を圧縮する機械。圧縮された空気は鉱山で削岩機に使用された。製造はアメリカのIngersoll Rand Company。東海道線の丹那トンネル工事で使用された。

 


ゐのくち渦巻きポンプ(Prof.A.Inokuty's Centrifugal Pump):1912年製造

 井口式ポンプとは、東京帝国大学機械工学科教授の井口在屋の理論に基づき、教え子の畑山一清が製造したものをいう。畑山はのちに荏原製作所を創業した。このポンプは井口式渦巻きポンプの現存最古のものである。




霧信号用熱気機関(Heat Engine for a Foghorn):1897年製造

 霧などで海上の視界が悪いときに,航海中の船に音で位置や方向を知らせる霧信号(霧笛)をならす圧搾空気を作るための機関。熱気機関という右側の炉の中で暖められた空気の膨張力で動く。北海道小樽の日和山灯台で使用された。

 


横型単気筒蒸気機関(Horizontal Single-cylinder Steam Engine):1868年頃製造

 富岡製糸場で生糸を作る繰糸機を動かすために使用されていた。日本にある最古の蒸気機関である。

 

 


発電機(Generator):1913年製造

 金沢市の辰巳水力発電所で使用された回転界磁型三相交流発電機。製造はアメリカのWestinghouse Electric Manifacturing Company である。

 


水車と発電機(Water Turbine & Generator):水車は1897年、発電機は1898年製造

 水車はアメリカのJames Leffel & Co. でフランシス型水車。発電機はドイツのAllgemeine Elektricitats-Gesellschaft 115kVAの三相交流発電機。1898年に米沢水力電気(株)滝の沢発電所に設置された。




活版印刷機(Letterpress Printing Machine):1909年製造

 製造は,東京築地活版製造所、国鉄の札幌印刷場で使用されていた。




乗車券印刷機(Ticket Printing Machine):1928年以降製造

 切符を印刷する専用機。駅名や1枚ごとの異なる通し番号の印刷に使われた。製造は国友鉄工所。乗車券印刷の特許を持つ。




ミーレ式活版印刷機(Miehle Letterpress Printing Machine):1911年製造

 下の台の上に平らな版面を置き、左右に動かし、上の回転する円筒によって力を加えて印刷する。印刷後に円筒を止めずに連続印刷できる。製造はアメリカのThe Miehle MFG Co.。大蔵省印刷局で紙幣や切手の印刷に使用された。




活版手引き印刷機(Hand Letterpress Machine):製造年不明

 イギリスで発明された、人の手でハンドルを引いて圧力を加えて印刷するアルビオン・プレス機。




石版手引き印刷機(Hand Lithography Press Machine):製造年不明

 石版の手刷り印刷機。製造は京都の川元商店。




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