AM変調回路の実験    2023.03.04

 無線の歴史をまとめていたときに、はじめは火花による間欠的な電波だったものが、次第に持続的な電波になり、これを使って音声を電波にのせることができるようになりました。いまではAM(Amplitude Modulation:振幅変調)を使ったものは少なくなってしまいましたが、電波に音声をのせる原理を学ぶときには、さけて通ることができない大事な原理です。先の「まとめ」には間に合いませんでしたが、なんとかきれいな被変調波の波形を得ることができたので、ここに掲載する次第です。

1.AM変調の原理
 変調の原理が書かれている本をみると、搬送波を変調波によって変調する波形や原理の数式については必ずといっていいほど出ていますから、ここではそれは省略します。では、どのようにして変調が行われるのかという説明にはなかなか行き当たりません。ここでは、『高周波回路の設計』久保大次郎、CQ出版社、1971.5 を参考に、コレクタ変調についてのはたらきを説明します。
図1 コレクタ変調回路の原理図

 コレクタ変調波、図1のようにコレクタに印加される電源電圧を変調波の振幅で変化させるものです。変調波の振幅が変化すると、コレクタに加わる電源電圧が変化することに相当するので、図2のように負荷線が①、②、③のように変化することになります。これにあわせてコレクタ電流が変化するため、コレクタ電流は変調波で変調された信号になるわけです。このときコレクタの負荷には、搬送波の周波数で共振する同調回路が接続されているので、直流分や変調波の成分はなくなり、変調された搬送波成分だけが出力にあらわれることになります。
図2 入力と出力の関係

2.コレクタ変調回路の実際
 では、このコレクタ変調回路を実際に製作してみましょう。入手しにくいのは変調トランスとし使用する小型出力トランスでしょうか。私は古いトランジスタラジオに付いていたトランスを流用しましたが、通販などで「トランジスタ用出力トランス」で調べてみて下さい。ST-32、ST-81などが使用できます。いずれも1次側インピーダンスが1kΩ前後、2次側が8Ωのものです。他は入手可能だと思います。

図3 回路図

 
私はプリント基板をエッチングで作りましたが、ユニバーサル基板でも可能です。ユニバーサル基板を使用するときは、T1、T2は7mm角のコイルを使用すれば、穴にぴったり入ります。このコイルはAMラジオの局部発振コイルで、コアの色が赤いものです。参考に、基板の部品配置図を図4に示します。

図4  基板の部品配置図



図5 部品のピンアサイン

 
製作したものの外観を図6に示します。

図6 製作したAM変調回路

 
1kHzの変調波を入れたときの被変調波の出力波形を図7に示します。発振コイルのコアをいっぱいに抜いたところで870kHzでした。T1とT2は同じ周波数で共振する必要があるので、ラジオなどで放送のないところにまずT1をあわせ、電波が一番強くなるところにT2をあわせるようにします。出力端子には、長い線をつながないでください(せいぜい数十センチまで)。電波が近隣に妨害を与える可能性があります。

図7 変調波形と出力波形の様子


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