ビー玉ロックゲート    2023.03.31

 ウェブサイトPinterestに出ていたからくりおもちゃの再現です。このサイトにはおもしろいおもちゃのアイディアがたくさんあるのですが、作り方まで書いてあるのはそうありません。ここでは作り方について解説します。

 このおもちゃは、カムによって上下するゲートに乗ったビー玉が坂の上まで上っていき、スロープを落ちていくものです。それこそ、無限に楽しむことができます。ビー玉を使ったおもちゃは孫がとても好きなので作ってみました。名前は「ビー玉ロックゲート」としました。Rock gate とは閘門のことです。閘門とは、水位の異なる場所で船を通過させるために、門を閉じ、水位を調整して同じ水位にして、船を通します。ビー玉が順番に上にあがっていく様子が、閘門の操作に似ていたのでつけました。

 全体の写真と図面を以下に示します。

図1 完成写真

図2 全体図


 材料は、上下するゲート材とスロープ材には、パインの集成材を使いました。カムとハンドルには樫を使っています。他はアガチス材です。材料は、手持ちのもの以外はDIYの店で揃えました。ビー玉は直径が12.5mmのものを使いました。
 一度、ゲートが3つのものを作ったのですが、動きが単調すぎておもしろくないので、4つのゲートのものにしました。写真に3つのゲートのものが混じりますが、写真は参考程度にして、図面を参照してください。

1.加工
(1)ゲートをつくる

 ゲートの寸法は、スロープの高さや、カムの動きでできる高低差、ゲートの段数などで決まります。私は、カムの高低差を8mm、ゲートの傾斜を3~4mmとしました。これでスロープの高低差は14mmとなりました。ゲートの傾斜は3.5mmだったのですが、作りにくいので、最初と最後を3mm差とし、真ん中の2つを4mm差としています。ゲート材の高さは多少の誤差は大丈夫ですが、15mmの寸法は少し大きくても上下動がきつくなります。これは最後に調整が可能です。


図3 ゲート材

(2)スロープの製作
 ここが一番難しいところだと思います。ビー玉がころがるスロープの部分(スロープ材(中))は、溝があったほうがよいようです。私は切り出したあとに、彫刻刀で彫り、サンドペーパーをかけました。ビー玉のころがりの出発点(ゲートの到着点)は、切り出したあとに、赤い矢印の向きにビー玉がころがるように傾斜をつけます。この高低差として4mmとってあります。各人で実験しながら整形してください。最初はビー玉の勢いだけで希望するような動きをすると思っていましたが、そうでもありません。ですからしっかり傾斜をつけておくことが必要です。ビー玉のころがりの到着点(ゲートの出発点)も同様です。
 スロープ材(中)は、下部をななめに切り取っておかないと、カムがぶつかってしまいます(設計ミスです)。カムの軸をどうしても中央にしたかったので、こういうことになりました。全部きりとってももちろん問題はありません。

図4 左右のスロープ材

図5 真ん中のスロープ材

図6  左右のスロープ材(加工途中)

(3)中板と側板の切り出し
 ゲートとスロープの間に仕切り板をいれました。スロープに溝が彫ってあれば不要です。その場合は支え板の幅を2mm少なくしてください。側板は、ビー玉が外にこぼれないようにしるためのものです。

図7 中板

図8 側板

(4)カムの製作
 
カムは摩耗などを考えて、固い樫材を使いました。これは東急ハンズで「木のハガキ」という名称で5mm厚の板が売られています。様々な種類があるので、結構活用しています。カムの動きは図8のように直線的に動かそうとすると、図9のような形になります。あまり気にしないのであれば、図10の円板でも問題ありません。ちょっと工夫して見たい方は原寸大のPDFファイル(ページの最後)をつけておきますので、印刷し板にノリではりつけ、加工してください。穴開けまで終了したら水につけてノリをはがします。
 カムの穴開けは垂直にあけないとブレが生じます。できればボール盤等を使用するのがよいと思います。まあ、このくらいのおもちゃなら多少のブレは動きには問題ありません。

図9  カムの上下動の動き

図10 図8から導いたカムの形状  図11 円を用いたカム

図12  図を貼り付けて切っていく(加工途中)

(5)カムの軸、とっ手の加工

 丸棒はDIYでφ5で売っていたものです。材質は不明。これをカムの軸と、とっ手のハンドルに使います。この寸法の穴開けでは接着剤がなくても固定することができました。油類場合は、ボンド等を使用してください。軸の右端の止める棒は2mmで、これはヨウジを切って使いました。


図13 軸ととっ手

(6)支え板と底板

 支え板は、高さを変えてあります。最初に作ったものは同じ高さだったのですが、違いをつけた方がビー玉の動きがよく見えます。底板は、支え板をネジ止めするために、皿木ネジの頭がかくれるようにさらってあります。



図14 支え板



図15 底板

2.組み立て
(1)スロープ部分の組み立て

 木工ボンドで各パーツを接着します。順番は側板に右のスロープを接着し、その後、真ん中のスロープ、左側のスロープと接着するとよいと思います。できあがったら、ビー玉をころがしてみて、思うような動きをするか確認します。ちょっとした段差や継ぎ目、溝、傾きなどが微妙に影響します。必要ならば調整のための加工をします。納得できるまで何度もころがしてください。他の部分を組んでしまうと、調整は難しくなります。

図16 スロープ部分の組み立て

(2)中板・側板をはり付ける

 中板をはり付け、もう一つの側板をはり付けたら、ゲートを差し込んでみて、スムーズに上下動するかどうかを確認します。必要ならば、ゲートの厚みを調整します。側板と左右のスロープ部分が一直線になっていない場合は、削って平らにしておきます。ここまではすべて木工ボンドで接着しました。接着後は、動かないように固定し、圧力をかけておきます。

(3)カムを軸に取り付ける
 カムを軸に取り付けます。軸に印をつけてください。穴をあけた側から35mm、15.5mm、15.5mm、15.5mmです。ペンなどで線を引いておき、この線にカムの向かって左側がくるように取り付けます。入れるのに固い場合は、木槌などを使い、支え板の穴を利用して叩いて押し込みます。カムの向きは互い違いになるようにします。緩い場合はボンド等で固定します。

図17 カムの組み立て(3つ入れた状態)

 カムができたら、支え板にカムの軸を差し込み、スロープ部分を手で押さえて、ゲートを装着すれば動きを確認することが可能です。ちゃんと動きましたか? 支え板をボンドで接着すると、大きな調整をすることはできなくなります。しっかり確認しておいて下さい。

(4)支え板とスロープ部分の接着
 カムの軸を支え板の穴に入れた状態で接着します。カムをはずすことはできなくなります。接着できたら、もう一度先ほどのように装着し、動きを確認して下さい。

(5)底板の取り付け
 底板を取り付けます。ここはボンドだけの接着では強度に不安があったので、ネジ止めと併用しました。皿ネジの山が出っ張らないように、φ6のドリルでさらっておきます。ネジは皿木ねじ3×20を使いました。さらったところにφ2のドリルで貫通穴をあけておくとネジ止めがしやすくなります。支え板の方はφ2のドリルで下穴をあけておきました。

(6)ハンドル部分の組み立て
 ハンドルの部分は、まずまわす部分の棒をはめ込み、その後、軸にはめ込みます。私の場合は、固く入ったので接着はしませんでした。緩い場合は接着して下さい。右側の止め木は、ヨウジを10mmの長さに切り、押し込みました。
 以上で完成です。

図18 完成!

 なお、蛇足ですが、幼児が手に取るおもちゃは、すべての面の面取りをしてペーパー等でなめらかに加工しておく必要があります。外側だけでなく、内側でも手が入るところはそのようにしておきましょう。遊んでいて、ケガをしたり、トゲが刺さったりすることがないようにしたいものです。

【カムの形状のPDFファイル】

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