「輪ぬけ」なパズル    2024.4.18

 芦ヶ原伸之氏の『PUZZLE IN WOOD 木のパズル』のなかに、ひも抜けパズルがある。これは同じ著者の『パズルをつくる』にも出てくる。ひもが短いため輪を棒から引き抜くことはできない。絶対に抜けそうにないひもが抜けるのには、ひもの長さを絶妙に調整する必要があった。これなしにはこのパズルはおもしろくない。製作の過程を以下に示す。

図1 パズルの最初の状態

 このパズルは2本の棒と2つの輪からできている。おっと大事なひもを忘れていた。2本の適当な太さのひもが必要だ。私は、棒はそのへんにころがっていた「おでん用の菜箸」を切って使った。輪は5mm厚のケヤキ板を切り抜いて加工した。これは東急ハンズで「木のハガキ」として売っている。糸のこで形をととのえたら、あとはヤスリで加工した。ペーパーで磨けばけっこうきれいな木目が出てくる。ひもは手芸店などで売っている細ひもで3mmの太さのものを使用した。アクリル製である。棒と輪の図面を図2に示す。

 入手できる棒の直径が12mmとはかぎらないので、それ以外の太さの棒の場合の注意点を書いておく。輪の内径である。ここでは17mmとしたが、棒に輪を通した状態でひも2本がぎりぎり通る大きさでないとパズルが成り立たない。3mmのひもはつぶれるので5mmの余裕をとった。また、棒の先端には穴開けが必要なので、棒の直径は最低でも8mm以上あったほうがやりやすい。

 
図2 輪と棒の寸法

図3  輪の加工前と後

  棒の先端にひもを埋め込む穴を空ける必要がある。私はピンバイスに3mmのドリル刃をつけて、手作業で穴開けをした。他に加工が難しいところはないと思う。
 このパズルで一番の重要点は、ひもの長さである。芦ヶ原伸之氏は、ひもの長さは棒の長さの62%~67%にすべきと言っている。これより長いとズルして解けてしまうし、短いと解けないそうだ。最後に解を示しておくので、これがギリギリできるようなひもの長さに調整すること。
 ひもは棒の長さより少し長めに切っておく。一方の端を棒の先端にとりつける。芦ヶ原氏はひもをライターであぶって溶かし、穴にねじ込むと書いているが、失敗したらやり直せともあったので、私は成功の確率の高い、接着剤で固定する方法を選択した。穴に「ボンドG17」を流し込み、少し待ってからひもを千枚通しで埋め込むように入れた。ひもは棒に埋め込む方を先にして、長さの調整は輪の方でするほうがよい。
 できたら(つまりひもを引っ張っても棒から抜けない)、まず棒に輪を通し、ひもを輪の穴に通す。輪の裏側でコブを作る。これは仮止めの状態なので、あまり強く結ばない。次にもう一つの棒に輪を通し、ひもを図4のようにからませてから、輪の穴に通す。これも輪の裏側で仮止めに結んでおく。

図4 棒、輪、ひもの通し方

 さて、ここからひもの長さの調整をするのだが、解答を知った上で調整する方がやりやすいので、以下に解答を示す。図5のように、Bの棒を上下ひっくり返し、Bの輪をAの棒に入れる。そしてBの棒のひもがついていない方の端をAのひもをくぐらせる。これで2つに分離する。このときAのひもの長さがぎりぎりBの棒がくぐり抜けられる長さでないといけないことはおわかりだろう。ここをうまくクリアできるようにひもの結び目を調整されたい。簿にはAとかBとか書いていないので、どちらをAにしてもよいように2つとも長さを調整することをお忘れなく。終わったらひもの余りはカットしておく。これで完成である。

図5 ひもの調整方法(または解答)

【参考】
・芦ヶ原伸之『PUZZLE IN WOOD 木のパズル』、創和出版、1987.8
・芦ヶ原伸之『パズルをつくる』(子どもとつくるシリーズ9)大月書店、1984.10

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