ラジオ用ICを使ったストレートラジオ
図1ラジオに興味を持った人が鉱石ラジオ(今はゲルマニウムラジオという)を作った次に作ろうと考えるのがこのストレートラジオでしょう。通常はトランジスタで作りますが、ラジオ用のICを使えば簡単にストレートラジオが製作できます。オーディオアンプにもICを使いました。
コイルには昔の鉱石ラジオで使われているスパイダーコイルを自分で巻いてみました。巻いた線が蜘蛛の巣のように見えるのでこの名前があります。このコイルはよく使われるバーアンテナコイルと比べても遜色がないほど感度がよいものです。
(1)スパイダーコイルを巻こう
スパイダーコイルの巻き枠には下敷きを使います。B5のノートに使う下敷きで、図2のように加工します。実寸大の図面をダウンロードできるようにしておきましたので、それを下敷きに貼り付けて採寸をしてください。 →図面はここから
1mm、3.2mm、5mmのドリルが必要です。なければ、キリや千枚通しのような工具で穴をあけ、穴を広げて下さい。コイルを巻く部分は丸くなっている必要はありません。要はコイルが巻ければいいわけですから。
0.5mmの太さのエナメル線(ポリウレタン線)を用意します。15mほど必要です。図3のように30回巻きます。巻始めと巻き終わりは巻いた線がほどけないように、穴に通しておきます。両端は約10cmのところで切断し、先端の1cmほどをサンドペーパーで磨いておきます。中の銅線と被覆が同じ色なので磨けたかどうか見分けがつきにくいですが、ハンダ付けをしてハンダが線にうまくつけば磨けた証拠です。
図2図3
(2)プリント基板の加工
部品を取り付けるプリント基板にはユニバーサル基板を使いました。サンハヤトのICB-88という基板です。
ポリバリコンを取り付ける穴を基板にあけます。図4をみて穴あけをしてください。中央の穴は穴をあけた後ヤスリで仕上げます。ネジ穴は基板に元々あいている穴と位置があわないので、とりあえずあけてヤスリで位置を調整してください。
図4
(3)部品のハンダ付け
図5にストレートラジオの回路図を示します。図6に部品配置図、図7に基板裏面の部品間の接続図を示しました。
使用するラジオ用ICはUTC7642という名称です。TA7642という名称で販売している場合もあります。オーディオアンプ用ICはTA7368Pという名称です。部品表に従って用意してください。
図5図6
図7
配線にあたって注意すべき点は、ICのピンを間違えないこと。電解コンデンサの極性を間違えないことです。
各部品のリード線は、他の部品との接続点を考えて、接続する向きに曲げてからハンダ付けするとよいです。ハンダ付けしたあとに曲げるときれいに曲がりません。
一箇所だけジャンパー線といって、基板の表面に配線し、銅はく面でハンダ付けする部分があります。TA7368Pの9ピンのところです(B18-B21)。部品のリード線の切れ端などを使ってください。各部品のハンダ付けが終了したら、コイルをポリバリコンの端子に接続します。また、電池スナップ、スピーカーも取り付けます。
今回は電源スイッチは使用しませんでした。必要な方は、基板のあいている場所に取り付けて下さい。
電池をつなぐ前に、テスターを持っている方は、電池スナップのところで導通チェックをしてください。0Ωの場合はどこかでショートしている可能性があるので、調べて下さい。持っていない人は、配線を再確認し、半固定抵抗を右に回しきった状態で電池をつなぎます。雑音などがでればまずは一安心です。何も音がしないときは、すぐに電池をはずし、配線を調べて下さい。
名称 | 個数 | 備考 |
ポリバリコン | 1 | ストレートラジオ用300pF |
ポリバリコン用ダイヤル | 1 | |
ラジオ用IC | 1 | UTC7642 |
オーディオアンプ用IC | 1 | TA7368P |
LED | 1 | 赤 |
半固定抵抗 | 1 | 10kΩ |
カーボン抵抗 | 2 | 1kΩ、1/4W |
カーボン抵抗 | 1 | 100kΩ、1/4W |
セラミックコンデンサ | 1 | 10pF |
セラミックコンデンサ | 1 | 330pF |
積層セラミックコンデンサ | 1 | 0.22μF |
マイラーコンデンサ | 1 | 0.001μF |
電解コンデンサ | 2 | 1μF |
電解コンデンサ | 2 | 47μF |
スピーカー | 1 | 直径5cm |
電池スナップ | 1 | 006P用 |
電池ボックス | 1 | 単3×2用 |
下敷き | 1 | B5版用 |
エナメル線 | 15m | 線径0.5mm |
ユニバーサル基板 | 1 | サンハヤトICB-88 |
サポート | 4 | 高さ15mm |
ネジ | 8 | M3×10 |
(3)回路の説明
今回使用したラジオ用ICは、台湾のUnisonic Technologies社(友順科技股份有限公司)のICです。秋月電子で1個25円で販売されていました。サトー電気ではTA7642という中国製ICが1個50円で販売されていました。このICはかつてミツミが生産していたLMF501というICと同等品です。このICは現在入手しにくく、入手できても高価です。UTC7642はLMF501に比べゲインが高いため、データシートに掲載されている回路ではノイズが多くて使い物になりませんでした。このICを使用したネット上の記事を参考にさせていただき、供給電圧を下げてゲインを落としたり、コンデンサを挿入したりして、図2の回路に落ち着きました。LEDはICに供給する電圧を落とすためのものなので、青や白のLEDは順方向電圧が赤などに比べて高いので使わないようにして下さい。
使用したスパイダーコイルには指向性があります。向きによって放送が聞こえたり聞こえなかったりします。
私が測定したところでは、このラジオの同調範囲は595kHz~1770kHzまでありました。
参考にしたウェブサイト
・http://project59.blog.fc2.com/blog-entry-691.html?sp
・https://www.jaqrp.org/modules/Contents/data/30/6_2IC_StraightRadio.pdf