技術職業教育通信   No.29 1996年2月29日  
 
 スターリングエンジンの製作

 第9回技術・職業教育冬季研究集会が、18日に同志社中学校技術室を会場に行われました。今回は、洛陽工業高校の小川氏を講師に、スターリングエンジンの製作を行いました。参加者は12名(中学校9名、高校3名)でした。
 以下に、概要と参加者の感想を紹介いたします。

スターリングエンジン 今回製作したスターリングエンジンは、埼玉の春日部工業高校の土田さんが開発した「中学生向けβ型スターリングエンジン」で、図のような形をしています。空き缶や木材、風船などどこででも手に入る材料で、むずかしい加工も不要ですから、今回参加できなかった方も、一度チャレンジしてみてはいかがでしょう(ただし、いろいろノウハウがありますので、その点は参加者からお聞きください)。
まずは1杯のコーヒーから製作の前にまずはコーヒーブレイク。と思ったら、材料に使う空き缶を作るために参加者みんなで缶コーヒを飲んだという次第。使用した缶コーヒーはショート缶といわれる104mm の高さのものを使用しました。飲んだ後、プルトップ面を缶切りで切り取り、バリをペンチできれいに押さえつけておきます。もちろん水洗いしておくことも忘れずに。


分業加工となった基礎材料加工
 製作は木材部分の加工から始まりました。のこぎりで一つ一つ切るのは面倒と、丸のこ盤が登場し、町工場のように15人分の材料切り出しがはじまりました。すると、別のところではディスプレーサ用のバルサ材を円柱に切り出す作業がはじまります。また、他の人は、溶接棒を使ったクランクシャフトの加工に入るなど、分業による加工が進行しました。いつもは自分の部品は自分で作る原則が貫かれているのですが、今回はなぜか分業になってしまいました。基礎加工に1時間半ほどかかったでしょうか。これ以降、個人ごとの組み立てがはじまります。

 まず、粗加工したディスプレーサ用のバルサ材が缶に入るように削ります。紙ヤスリを使うとうまくいくようです。缶に軽く出し入れができるようになるサイズまで削ります。次に、加工された木材でタワーを作ります。片方の側板はクランクシャフトを組み込んだ後でネジ止めします。クランクシャフトはタワーに組み込む前に、コンロッド用の割り箸加工品を通しておきます。

むずかしいパワーピストン加工
 製作中もっともむずかしいところは、風船を使ったパワーピストン加工の部分です。ゴム風船のゴムを伸ばしたままの状態で、釣り糸を通し、割り箸を画鋲で止めることなど、至難の業です。そこで、工作を助ける補助具が必要になります。缶切りでプルトップ面を切り取った空き缶を上部から2pほどのところで切り取ったものです。使用する缶は同じ直径のものが必要です。これにゴムを広げてかぶせます。回りをマジックで印をつけ、ゴムの中央にも印をつけます。ここに針でつついて穴をあけ、釣り糸を通します。あまり大きい穴をあけるとここから空気がもれてしまいますので、つつく程度で、ゴムを思いっきり広げて穴を探し、通します。ここの加工が製作中もっともむずかしいところです。ゴムをひっぱる人と糸を通す人の2人ががりの作業になりました。

ゆっくりと回りはじめた!
 糸を通すことができたら、パンク修理用のシールをはりつけ、割り箸を画鋲でとめます。補助具からゴムをはずし、本体の缶に移しかえます。輪ゴムで周りをとめて、タワーに固定します。クランクシャフトの連結部が最上位の位置にきたところで止め、ディスプレーサを一番上まで引き上げた状態で、クリップに糸を固定します。油粘土でバランスウェイトを作り固定します。これで完成です。

時計を見たら午後5時をまわっていました。
 アルコールランプで缶を加熱すると、ゴムがだんだん膨れ上がり、クランクシャフトがゆっくりと回転しはじめました。このエンジンは大変ゆっくり回転するものだそうです。ゴムに糸を通した部分の穴が大きすぎて、空気漏れをおこしてしまったり、クランクシャフトが一直線にできていないために回りにくかったり、うまく回転させるためのいろいろなノウハウがあり、そう簡単にできるものでないことがわかりました。特に気密を保つのがポイントだそうです。

 私の作ったエンジンも、半回転ほどしたあとは止まってしまいました。また、暇を見つけて、改良してみたいと思っています。


参加者のアンケートから

○本日の参加は、
「ビラをみて」が5人、「同僚、友人に誘われた」が4人でした。

○内容について、
 「期待どおりであった」が6人、
 「期待どおりではなかったがよかった」が2人 でした。

○今回の教材は授業に利用できますか?
・自分でもう何回か試作し、成功したあかつきにはぜひやってみたい。
・機械の領域での実験によいと思いました。スターリングエンジンの原理がわかる教材としてよい。→生徒たちが思考や工夫しながら実験できたらよいと思いました。
・もう少し改良が必要かな・・・
・選択及び工作クラブなどに生かせるので実習してみたい。
・実験させてみたら、きっと興味をもってくれると思う。
・おもしろいと思うが、工夫を要す。
・かなりむずかしい部分があるが、クラブなどで興味がある生徒にとってはよろこぶ内容である。
・中学生に作らせようとした場合、もう少し簡単に作れるような工夫がいると思う。回らないことの原因が私自身はっきりわからない。
・成功するのが難しいので、今の段階ではもう少し考える必要がある。


○今回のテーマ、内容、指導などについてご意見やご感想を
・内容としては満足している。
・クランク軸のゆがみを矯正できるような工夫。
・身近なものを使ってできる内容にしてはおもしろい内容であり、スターリングエンジンの原理もわかり、興味深いものであった。
・専門外の領域なので、とても興味をもって受講でき、有意義な研修だった。  ていねいなご指導に感謝いたします。
・もう少し時間がほしかった。考え方、作動の原理についてもっと深く考えてみたかった。
・よかった。
・興味深いもので良かったです。
・今回のエンジンのもう少し精密なものがやりたいと思います。
・よくもこんなすごいことを考えつかれたものと敬服します。今回の教材を通して、この作品そのものよりも、大胆にかつ試行を重ねながら開発する努力と姿勢の誠実さを教師として学ばせていただきました。準備等本当にありがとうございました。

○今後、企画してほしいテーマや内容があればお書きください
・すぐ授業に役立てるものをお願いします。金属加工、電気分野を希望します。
・電気領域の教材→授業ではキットが多いので、生徒が好むような教材を望みます。
・動くものなどや音など、何でもよろしくお願いします。
・今回のような内容が、楽しくて、意義があるので、今後も計画してください。
・引き続いて機械、エンジンに焦点をあててやってもらいたいと思う。
・すぐに授業に使える教材というテーマで。


95年度全国教研(札幌)に参加して

M生


 1月15〜17日に95年度の教育研究全国集会が札幌市で開催されました。技術・職業教育分科会には、西京商業高校の前川先生が参加されましたので、京教組へ提出された論議の特徴・感想文から転載することを許可していただきましたので、以下に掲載いたします。


□分科会での報告・討論の特徴
 技術・工業の特徴というか、特色というべきか、「現物」を持ち込まれるレポーターが多かった。金属加工の実習成果物、プリント基板、小型ロボットなどである。また、ビデオなどによって学校の風景を写されていた人もいた。商業科の自分にとっては、「目に見える」作品づくり、ものづくりへのアプローチということが、非常に新鮮でした。

□特に印象に残ったレポート
 長野の先生のロボットや、大阪の先生のコンピュータ制御による基板など。

□分科会の報告・討論から京都が学ぶべき内容
 総合学科の話題について、さかんに討論されていた。京都では他人事の感があるが、隣の大阪では切実な問題である。京都でも真摯な対応を考える必要がある。先手必勝といわれるように今から対応を考えるべきである。

□教研全体を通しての感想や改善すべき点など
 高校・中学の先生においては、他教科の分科会へも参加しやすくしてほしい。

 

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