技術職業教育通信   No.26 1995年2月3日  
 
 中途半端な総合学科 −−94年度全国教研に参加して−−
 
 一番印象に残った大阪の総合学科についてのレポートは、大変興味深いものでした。  京都にも総合学科の波が押し寄せてくる現在、どのように対応するかは別にして、まずどのようなものかがわからなければいけないということを当初より考えていましたが、聞けば聞くほど中途半端なものなのではないかという感じがします。普通科と職業科の橋渡し的な存在といってしまうと聞こえはいいのですが、単位などの話となると訳が分からなくなってきます。例えば、単位制の考えで修得単位総数のみで考えると、英語を全くとらないでも他の教科で単位数を稼ぎ、卒業する生徒が出てくるかもしれないし、逆に英語が好きなので数学をとらないで、その分を英語で稼いで卒業する生徒が出るかもしれない。じゃ、必修単位の教科をそこかしこに増やせば、結局、生徒の選択肢なんか少ししかなくなって、現在の職業科と一緒になってしまう。それ以上に危惧されるのが、最初に自分だけのカリキュラムを組むのは生徒ということです。例えば、どの職業を目指すかでカリキュラムの取り方も違ってきます。しかし、明確な進路を目指していてそのことを担任や進路の先生に相談してからとるような生徒ならいざ知らず、前述のような明確な目標を持たず、卒業のみを考え、いかに楽に単位数を取得できるかを考える生徒も出るでしょう。そして、全部ではないにしてもそういう生徒が大半を占めたとき、カリキュラムを集約するのは教務部にいる教員です。今、選択授業を3年生で取り入れている本校を見てもかなりのご苦労があります。教員の苦労は、生徒が頑張るためならいいですが、生徒を遊ばせたりする苦労などしたくはないものです。 教育委員会は、本気で総合学科を創設する気があるのなら、間に合わせの人事や今いる教員に超過労働をさせるのではなく、人員を整備して、しっかりしたヴィジョンを持ってやってほしいものです。最初は「そんなオーバーな」とも思いましたが、総合学科へ変えておいて、生徒の指導困難、希望者の減少を誘い、職業科つぶしを本気で狙っているのでは・・・・・と、あながち被害妄想だともいえないなと思いました。

                       (伏見工業高校:M)

 M先生は、大阪で行われた全国教研の技術・職業教育分科会に「測量合宿の取り組み」のレポートを持って参加されました。この感想文は、京教組宛の報告書をご本人と京教組の了解を得て転載しました。


熱中して時のたつのを忘れた・・・!?

 第8回技術・職業教育冬季研究集会が1月29日に、教育文化センターで行われました。今回は「電気領域」の教材を扱おうといろいろ検討した結果、若者の必需品となっているヘッドフォン・ステレオカセット(一般的にはウォークマンの商品名で有名)に接続して、スピーカーを鳴らすアンプを製作することとなりました。同時に、製作にエッチングを使って、これらの技術の習得もしてもらうという狙いもありました。

 従来は京教組を通じて、案内ビラを技術科の全教員を対象に配付していましたが、今回準備が間に合わず、いままでの参加者や民主教育推進委員の先生を中心に案内をしました。そのためか、あるいはテーマが不評だったのか、はたまた阪神大震災の救援等の活動に多忙だったためか、今回は4名の参加でした。それでも参加者は時間をはるかにオーバーするほど熱中し、無事員完成させることができました。そして、「大変勉強になった」と主催者にとっては嬉しい評価をしていただきました。以下に、製作の概要と参加者の感想を掲載します。

 今までのプリント基板作成の場合、基板のパターンがすでにできているものを見て、それを写し取り、基板をエッチングするという工程でしたが、今回はパターンを各自が作成するところからはじめることとしました。プリント基板作成の工程では、回路図からパターンを作成するところが一番大変であり、かつおもしろいところなので、その経験をしてもらえば、今度は各自が回路図から基板を作る力をつけることになると考えたわけです。このパターン作りは慣れないと時間がかかるので、当初1時間程度は必要と考えていましたが、初めての経験で勝手がわからず、1時間半から2時間かかってしまいました。グラフ用紙に書いたパターン図をプリント基板に写し取り、マジックでパターンを描き、エッチングを行いました。その後、ドリルで穴明けをし、フラックスを塗って完成です。この時点ですでに4時を過ぎていました。部品取り付けやハンダ付けは比較的早くでき、5時頃に完成させることができました。振り返ると全体の6割くらいがパターン作成にあてられたことになります。マジックを塗って行うエッチングは、細かいパターンが描けず、マジックの部分が不安定なため、あまり使われなくなってきていますが、手軽にできるため、簡単なパターンや試作などに使われています。中学生の誰もが回路図からパターンを作成することはむずかしいと思われますが、完成したパターン図を示してやれば、プリント基板作りをすることは可能だと考えます。ちなみに私の学校では10名程度(最大時17名)の生徒に対して、基板作りを約2時間で行っています。中学の場合は生徒数が多いこと、設備が整っていないことなどがありますが、早くできた生徒を指導にあたらせるなどの措置がとれるという良い点もあります。「電気領域」の教材として既製の教材から切り換えてみるのも良いのではないでしょうか。


【参加者の感想】

◎今回の講座について

・回路基板から自分で行うことができ、勉強になった。この教材は子どもたちにうけるだろうと思うので、来年の授業で実践してみたい。

◎講座の内容について

・回路設計ははじめての体験だったので時間がかかった。これがとっても勉強になった。

・基板のエッチングからできてよい経験になった。

◎講座についての要望

・このような教材をどのように見つけられるのか?教えて欲しい。授業ではキットが多い中、基板から製作することが大切だと思うから。

◎今後あつかって欲しいテーマ

・今回のような電気分野や情報(パソコン)分野について

・中学校の電気(男女共学)で行う教材

・情報基礎のプログラム

◎京都の技術・職業教育についての意見等

・教材等の準備ごくろう様でした。もう少し参加者が増えたらと毎回思います。各支部ごとでリーダーを作り広めていくことも必要と思っています。  


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