技術職業教育通信 No.37 1999年2月24日 |
冬季教研「木工ロクロの体験」大盛会! 〜「私も1台ほしいなぁ」〜 |
2月13日(土)の午後、「木工ロクロを体験しよう」をテーマに技術・職業教育冬季教研が同志社中学校を会場に開かれました。当日は、時折雪の降る天候の中、滋賀や大阪の先生も含め、15名の参加者がありました。 今回、昨年の技術教育研究会の全国大会でも話題になった「プロから学ぶシリーズ」の第3弾を、瀬戸市在住の井上重信さんを講師に迎えて行うことができました。井上さんは、漆工芸作家で、「西洋ロクロ教室」を主宰され、米国木工ロクロ協会会員でもあります。 井上さんは、最初に、ご自身と木工ロクロとの出会いのこと、和ロクロと西洋ロクロの由来や構造、刃物の違いなどについて説明され、その後、実演を行われました。 それから各自で、体験がはじまりました。材料をネジでチャックにとりつけ、外周と端面を削り、それから形を作っていきます。井上さんの実演では大変簡単そうに見えたのですが、体験してみると、刃物を食い込ませてしまったり、木地がなめらかに削れないなど、かなり練習が必要であることがわかります。しかし、思ったよりも簡単にできるのには驚きました。 井上さんによれば、木工ロクロは、木材の捨てているような部材で製作できるので無駄がないこと、家具作りなどよりも簡単でしかも家族から感動されるような作品ができるなどの長所があるということでした。 使用する刃物には何種類かありましたが、「この場合にはこれ」という考え方をせず、自分が使いやすい刃物を使えばよいということでした。実際には、自分で使いやすいように刃物を加工して使っている人が多いということです。 一方の面を削り終わったら、ひっくり返して、爪のあるチャックで、爪を中から外に広げるようにして固定し、反対の面を削っていきます。その際、井上さんは木の木目を意識して中から内へと削ったり、刃物を少しずらすようにして削ったりと、いろいろなテクニックを教えて下さるのですが、それを飲み込むにはまだまだ練習不足です。 木工ロクロは2台でしたので、加工者と数人の見学者を除いた人たちには、木製の笛「コカリナ」を製作してもらいました。木の丸棒に途中まで穴をあけたものに、ドリルで指穴をあけ、ノミでリードを作るのですが、1オクターブの音がでるまでに、けっこう試行錯誤が必要で、ほとんどの時間をこれで費やしている参加者もおりました。それでも、しばらくすると会場のあちこちからピィピィという笛の音が聞こえてきました。 木工ロクロとコカリナの両方の体験がまだ全員が終わっていないのに、時刻は5時を迎えたので、とりあえず解散。その後、残留できる人は残って続きを行いました。結局、すべてが終わったのが6時で、大幅に時間超過をして、講師の井上さんにも、会場の同志社中学にも迷惑をかけてしまいました。これも予想以上の参加者があったためで、うれしい誤算です。 参加者 滋賀で全教の全国教研が行われました 1月21日〜24日、滋賀県下の各会場で、全教の教育研究全国集会が行われました。今回は、京都からはレポート発表がなかったのですが、隣県でもあるので、分科会初日に荻野が、2日目、3日目に鈴木先生が技術・職業教育分科会に参加しました。分科会に提出されたレポートの一覧を紹介します。 (お) 全国教研 技術・職業分科会に参加して 私が参加したのは教研3日目(分科会2日目)からです。この日は分科会を小・中学校と高校に分けて、小分科会が開かれ、私は小・中学校分科会に参加しました。 新学習指導要領(以下、新CS)について共同研究者からの提案・質疑・討論のあと、レポート報告が行われました。新CSの「技術とものづくり」の領域に関するものが1本と栽培領域に関するものが2本が中心です。 新CSでは、技術・家庭科の11領域が技術分野と家庭分野になります。1年時の配当される「技術とものづくり」では、現行の情報基礎以外の木材加工、電気、金属加工、機械、栽培の領域をあわせた内容になっています。 発表レポートの一つはこの領域に対する試案の実践レポートが出されました。「技術科加工学習の再編構想にもとづく木材加工の授業(中間報告)」東京都の先生が発表者です。 私はこのレポートに一番関心がありました。内容的には多くの問題を含んでいると感じたのですが、これからの技術科の教育課程を考えていく中で私にたくさんの問題を提起してくれました。 現在私の1年の木材加工の授業は、製図と一枚板からの箱作りを大きな2本柱として位置付けて、木材の性質などに関する部分はできる限り簡素化しています。それでも時間数的には一杯ですが、レポートではさらに金属加工の領域まで含んでいるものでした。ですから私のそのレポートの第一印象は「新CSになるとえらい雑多な内容になるんだな」というものでした。 レポートに対する議論の中心は、生徒が事前に木口だけを切って作った積み木(30*40*100ミリ角材)を二つ使用して、ほぞ加工による木づちを三時間で作り上げる、というところに集中しました。できあがったものは、一言でいうとT型の木組みです。 発表者は木づちとして見るより、大切な指導内容をたくさん含んだ教材として見て欲しい、と言っておられました。しかし、参加者からは「本物の木づちとは似てもにつかないものを木づちとして作らせる必要があるのか?」「もって帰って使用できるぐらいのものを作らせるべきではないのか?」そして、「そんな中途半端なものは作らせる必要はない」という発言までありました。 議論においては発表者がかなり不利な状況でしたが、私自身議論から「ものをつくらせる意味」をもう一度考えさせられました。生産という観点から考えると「何をつくらせるか」、教育という観点から考えると「どう作らせるか」ということです。 新CSでは、加工学習の時間は大幅に減少します。限られた時間内で何を教え、何を指導していくか、教師が教える内容の中にしっかりとしたテーマを持って指導していくことが如何に必要かを痛感しました。 そして、少しでも「本物」に触れさせれるような授業がしたい、していきたいと感じました。基本的な加工を含み、生産技術に携わる、そのような題材を探すのがこれからの私の課題です。 最後に、これは技術科の共同研究者の方が言われていたことですが、「これからは否応なく合科の流れにある。そして、今まで技術科は色々なことを言ってきたが、もし合科されたとしても、技術科としてこれは大切だと言う基礎基本を確立していく必要がある」と言う言葉が胸にすっと落ち、僕自身も頑張らなくてはと思いました。 |