VLF(超長波)受信用アップコンバータの製作    2023.10.13

 私が若い頃は、標準電波JJYは短波帯で電波を出していたので、標準としてよく活用した。しかし、現在は長波帯での送信となっていて、通常の受信機ではなかなか受信することができない。超長波帯の25kHzでロシアのハバロフスクからRAB-99という標準周波数報時局が出ていることは以前から知っていたが、その低い周波数ゆえに受信を諦めていた。長波JJYの受信とともにこの25kHzの受信もできるコンバータを製作してみた。25kHzのRAB-99も受信ができたので、ここにコンバータについて紹介したい。

図1 製作したアップコンバータ

1.ここに至るまでの経過

 ネットで検索すると、JJYを受信するために短波帯に変換するアップコンバータの記事や独立した受信機の記事などがけっこうある。これらを参考に回路を考えたが、最終的に図2の回路に落ち着いた。製作の目的に携帯ができることがある。いつになるかはわからないが、将来ヨーロッパに行く機会があれば、このコンバータと短波ラジオを持参し、ヨーロッパの長波標準電波を受信したいと考えたためである。そうすると必然的にバーアンテナを使用することになる。当初は中波用のバーアンテナに容量の大きなコンデンサを付加することで受信周波数を下げようと考えた。

 そうこうしているうちに、幸運なことに職場の電波時計が壊れたので、残骸を譲り受けることができ、この中に入っていたバーアンテナを使用することができた。時計の受信回路は、同調用コンデンサとして1nF(1000pF)で、JJY60kHzと同調をとっているようであった。コイルのインダクタンスを計算するとL=6.85mHとなった。このLで25kHzに同調させるには、C=5900pFが必要で、60kHz用の1000pFは兼用するとすると、4900PFとなる。そこで4700pFと220pFを並列にして使用することにした。

 高周波増幅回路には、2SK439を使用した。ソースのバイパスコンデンサ0.1uFを入れていたが発振気味のため、取り除いた。変換にはDBM ICのSA612Aを使用した。当初は、局部発振にSG-8002DCというプログラマブル水晶発振用ICを使って20MHzを発振させ、SA612に注入していたが、思うような結果が得られず、結局SA612Aの内部発振回路を利用した水晶発振子を使った回路にした。SA612AはSO8パッケージなので、DIPに変換する基板を必要とする。細かい基板への半田付けは年寄り泣かせである。こういう半田付けは、ICの底に両面テープを貼り、基板から動かないようにして、まず1本のピンを半田付けする。すべてのピンの位置が正しい位置にきていることを確認して、対角の2本目のピンを半田付けする。あとは1本づつていねいに半田付けをする。となりのピンと半田がつながってしまったら、半田吸い取り器で半田をすいとればよい。

2.回路図とパーツ

図2 回路図

表1 部品表


 私は、プリント基板にエッチングを行い、基板を作成したが、ICB-93Sなどのユニバーサル基板でも可能である。

 回路の電源に整流用ダイオードが入っているのは、以前に使用した発振用IC SG-8002DCが最大定格5.5Vであったので、6Vの電圧では高すぎるため、電圧を落とすために入れたものである。なくてもよい(SA612Aの最大定格は9V)。

 調整は、出力の高周波トランスを14MHzにあわせるだけである。短波ラジオに接続し、14Mhzに漏れ電波がでているので、これが最大になるようにコアを動かす。

 短波ラジオとの接続だが、私の所有しているのはSONYのICF-SW100なので、アンテナ入力端子がミニプラグとなっているので、接続ケーブルを作成した。RCAプラグとミニプラグのケーブルである。

図3

3.受信結果

 自宅がマンションのため、室内ではまったく、ベランダでもよろしくない。少し行けば京都御苑があるので、そこに行くとRAB-99はSINPO=34443ほどの状態で聞くことができた。ここでは、JJYの60kHzも40kHzも良好に聞こえる。
 RAB-99の電波は、11:06~11:36JSTと15:06~15:36に出る。最初の1分間に局名をモールスで打つのだが、驚くほど早いスピードであることがわかった。1分間の間に20回繰り返す。3秒に1回の割合である。3秒間に、・-・  ・-  -・・・  ----・  ----・ を打つので、初めて聞いたときには業務局が混信していると思ったほどであった。 RAB-99局の送信フォーマットは、ここを参照されたい。

 
25kHz用のコンデンサを77.5kHz用(C=620pF)とする回路にすれば、ドイツのDCF-77が受信できる。60kHzはそのままでイギリスのMSF(60kHz)が受信できる。さて、行ける日は来るのだろうか?


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